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| ペリー・ローダン |

Kugelshiff

メタフィジカルSFの夢


 大統一場理論。かつて光の振動媒体、電磁力遠隔作用の媒体として想定されたエーテル。そして、ニュートンは重力遠隔作用の存在基盤を宇宙にあまねく広がる神の精霊(プシュケ)に求めた……宇宙の論理的秩序構造(物理法則)の源を世界の『裏側』に求める伝統は遠くギリシアの古代にさかのぼる。以来、人々はこうした世界論理の構造を心の内なる論理的秩序構造と同じものとして捉え、考えてきた。すなわち、人がこの世の有様を認識できるのは、人の魂(プシュケ)も世界霊魂も同じ創造者に発し、同じ秩序を分かちもつから、と。それこそは、古来、科学の正統性を証明し支えてきた世界認識の根本原理なのである。

 ここに、こうした世界観そのものを『小道具』に用いた文字どおりのメタフィジカルSFを紹介しよう。

舞台

 この作品の中で、宇宙の法則性を支える構造はプシオン "Psion" (『魂』を意識してこう読んでおく。"Psi" を重力より高次の第五の力としてとらえ、量子に擬して表現したもの)の回路網と呼ばれる。そのかなめはこの宇宙を二重螺旋(DNAのように!)を描いて取り巻いたいくつもの巨大なプシオン場ユニット(コスモヌクレオチド!!)。そこに蓄えられた無限の情報(秩序の法則)はメッセンジャー・プシオン場にのって回路網を走りぬけ、この四次元時空連続体に物理情報を与える。こうして、各ヌクレオチドはそれぞれ銀河団サイズの宙域を制御し維持ているのだ。

 単純な法則の必然の組合せから生命が生まれ、知性が生じ、やが宇宙構造を認識しつつ超知性体に進化する。かれらは自分の勢力版図をポジティヴに(宇宙プシオン回路網と協調し共鳴するかたちで居住種族の生活と意識をみちびいて)拡大しようとする。そうすることで、超知性体はやがて支配宙域と共にプシオン的な特異点に進化し、無限のエネルギーを吐きだす『物質の泉』を形成する――この循環がおよそ考えられる宇宙の寿命というものを引きのばし存続させていくのだ。そして、この役割を果たした超存在は次の段階で泉の彼岸に座を占めるコスモクラート(秩序維持者)となり、こうしたプシオン=宇宙維持システムを指揮することになるといわれている。

主人公

 この銀河系とアンドロメダを含む局所銀河団に、特に名をもたず〈それ〉と自称する超知性体がいた。そして、まだ若い〈それ〉はコスモクラートたちの指示をうけて、低次の、しかし、運命のすべてを託せるだけの力をひめた知性体を捜しもとめる。その者に老化を防ぐ相対的な不死性と必要な助言を与えるのだ……。

そうして選ばれたひとりの男がいる。

 男は理想を掲げて故郷たる地球を統一し、銀河系文明の一員にまで育てあげ、一度は銀河系諸種族に共存の道を拓いた――だが、宇宙的な時間からすればほんの一瞬ののちに、銀河系はふたたび戦乱 の時代を迎える。それでもかれは人類を主導し、局所銀河団の各所に存在した圧迫と不安の種を取りのぞき、知らずに〈それ〉の発展に貢献していった――しかし、同時にこのことは人類自身の拡散と離反を促し、不死に疲れた男はまた次第に孤立し多くの友を失う。やがて、強大な多銀河連合機構が銀河系に進出を開始した時、やはりかれは理想のもと人生最大の戦いにすべてを投じ、そのあげく銀河系を去らざるをえなくなる――男は長い時をかけ、侵略者撃退の戦略をたずさえて故郷銀河系に帰還するが、住人たちはかれを待つことなく連帯してみずから事にあたっていた。戦いの結果として放浪惑星となりはてた故郷・地球を男は捜しもとめ、おのれを必要とする人々を求めて遠い宙域に足を運ぶ――だが、そこに生きのこる者はもはやなかった……かれはすべてを失ったのだ。

 男は地球捜索の途上に超知性体たちと生命播種船の謎とに出会い、そこに見出したコスモクラートと宇宙秩序の秘密に心惹かれる。制御を失って『宇宙震』を放出しつづけるある物質の泉を押さえるために、かれはコスモクラートの委託をうけて自分と似た不死の宇宙秩序協力者たちの遺産をもとめていく――侵略者を駆逐したばかりの故郷銀河系にも、この宇宙震は被害をおよぼしていた。さらに、この事件を緒として、太古の昔から“それ”に攻撃をしかけてきた『ネガティヴな』超知性体ゼト・アポフィスが姿をあらわし、またかつてその大攻勢を退けた宇宙秩序機構『深淵の騎士団』の伝説が知られるようになる。

ネガティヴな超知性体の進化はいつか破滅に至る。それゆえ、ゼト・アポフィスは〈それ〉のポジティヴな成果を手に入れることで自身の存続をはからんとしているのだ……コスモクラートの任務を果たした男は帰郷し、人々がもはや自分をあてにしていないことを痛感する――しかし、それでもかれは〈それ〉の委託をうけて強大な自由通商勢力を組織する。〈それ〉とその版図の住人をゼト・アポフィスから守るために。

 今、男はすでに2000年以上を生きていた。ようやく自分が選ばれたことの誇りを教えられたが、それを単純に喜ぶにはあまりに多くを失い過ぎて、それでも理想を忘れられない……そんな男だった。

物語

 コスモクラートが男に解明させようとしている三つの謎があるという。

  1. フロストルービンとは何か?
  2. 無限艦隊は何処にはじまり、何処に終わるのか?
  3. 法 "Das Gesetz" は何者が作り、何が記されているのか?

――フロストルービンとはかつて変異して本来の在所を離れ、宇宙の表層を放浪しつづけたコスモヌクレオチド。ゼト・アポフィスがこれを利用して超知性体へと進化を遂げ、プシオン場にさらなる変容を招いた時、この危険な構造物は騎士団の前任種族の手で、ある宙域に封印された。そして、太古の提督オルドーバンがコスモクラートの命をうけて建設し、いつしか戯れに『無限艦隊』と呼ばれるようになった大船団こそは、かつてのフロストルービン守護艦隊。永劫の探索の時を経て、かれらは失われたプシオン場のもとへとたりつくのだ……。

 男はフロストルービンと無限艦隊の謎を解き、共にゼト・アポフィスを倒し、フロストルービン修復と帰還の計画を遂行することになる。

 かれはコスモクラートの指示するままに、無限艦隊を率いて局所銀河団をめぐる!! そこに平和と協調を築く力を与えてきたかれ自身の足跡、プシオンの堆積を求めて――男がつぎこんだ思いと努力とその成果はその地の種族たちの過去と今日に刻みこまれ、その地のプシオン網の内で巨大な力となって息づいているのだ。

 無限艦隊種族の心と建設者オルドーバンの思いを連れた男がこれらクロノフォシル(歴史の化石)をめぐるたび、新たに呼びさまされたプシオンの活力は宇宙の回路網を揺るがし、狂ったフロストルービンにポジティヴな衝撃をあたえ、かつての機能を取り戻させると共に本来の在所に帰還させていくだろう。そして、クロノフォシル活性化は同時にそこに住む者たちの進化にも力を与え、より一層の秩序と協調を生みだしていく。

 また、この旅はついに姿を現わした『混沌の力』との戦いでもあった。コスモクラートとカオターク(混沌の始源)はこの宇宙のはじめからプシオン・システムの全か無かを賭けて戦いつづけてきたのだ。フロストルービンを失った宙域を占める混沌の『負の球体』こそはカオタークの牙城。そこに居をかまえた超知性体は混沌の尖兵として、物理法則の欠如を究極の武器として、男と“それ”に戦いを挑む。

 そう、男は勝利するだろう。だが、同時に理解してもいる。敵もおのれの生命を守るため、存在基盤たる負の球体を守るために戦っているのだということを。そして、知っている。フロストルービン帰還を待つ間、多くの種族がコスモクラートの命をうけて働き、戦い、破滅に導かれた事実を――フロストルービン帰還計画を成し遂げたとき、男はこらえきれずにコスモクラートを糾弾するだろう。コスモクラートのために第三の謎を解くことを拒否し、その結果、どのような運命が待っていようとも恐れはすまい。

 わかっているのだから。秩序の勢力にとっては、男もやはり戦いの駒のひとつに過ぎない。

……おとめ座銀河団には、秩序にも混沌にも属さずに第三の道を歩む超知性体エスタルゥがいるという。だが、そこに見出すものはどうだろう。その地を支配するのは永劫の闘争の哲学。奇怪なプシオンの奇跡が住む者たちを抑圧し、その地のコスモヌクレオチド『ドリフェル』を脅かす。

 男は信念のままにこの企ての阻止にあたるはずだ。すべての信頼と努力が裏切られようとも、かれはすべてを投げ出すことができない。守るべき何かをけっして忘れられない。

 いつの日か、男は『法』の創造者と遭遇し、そこでも多くの挫折に出会い……それでも、この思いを断ちきれないだろう。そして、かれの旧友を自認する者たちもまた旅をつづけるのだ。

「ペリー・ローダン」PERRY RHODAN, der Erbe des Universums の新たなる一章が幕をあける。かれは大宇宙の無数の生命の一員であり、それゆえ、いまも生きる道を捜しもとめている。


1988/7/15 produced by y.w / rlmdi.