rlmdi.
| ペリー・ローダン |

Thoregon Sechs

Thoregon comes true / トレゴンは来る

1999/6/15 r.psytoh / 西塔玲二
- 監修 / y.wakabayashi

PERRY RHODAN Nr.1900 - 1950
NGZ1289-1290年 / 銀河系、プイドル、そして、ダ・グラウシュで

《トレゴン6》奪回!――そして、《マテリア》は来たる


ヘリオートス/バオリン=デルタ空間

 ヘリオートスは物語を中断し、かわりにテラへと視線を転じた。何があろうとペリー・ローダンのこころがとどまるその場所へと。
〈きみの人類を感じるか? かれらはまだ、きみの種族かね?〉
―― Perry Rhodan-Heft Nr.1900


ヘリオートス/テラ上空から

「きみの名前は?」頭の中で声が訊ねた。
「シュタイナー・ハンセン。LFT政府の職員だ。自由テラナー連盟の」
 奇妙な、非現実的な対話だった。くつろいで、夢とうつつのはざまのどこか。ヘリオートスの声はここちよかった。気づかぬうちに信頼を寄せてしまう。そしてまた、こんなにも誇らしい気持ちで、胸襟を開いて語れることに、かれは満足だった。
「きみは幸福かね、シュタイナー」
「いや」
「叶わぬ夢を抱いてはいないか? 望みながらもけっして叶うことはないと知っているような?」
「ああ、そういうものならある。わたしはプロスペクターになりたかったんだ。未知の世界をこの目で見て、隠された宝を探してみたかった」
「隠された宝……。それなら、しごく簡単なことだよ、シュタイナー」
 ヘリオートスはかれにひとつの物語を語った。はじめは、さして重要とも思われない物語。
 マゼラン星雲の片隅のある鉱山惑星に、単独行動する宇宙船があった。テラに発したプロスペクターの一団が、口を糊するために借用している。
 このプロスペクターたちにとって、いまは決定的瞬間。はじめてホワルゴニウムをみつけたのだ。なによりも希有で高価な鉱石。もし競争相手に先んじて鉱脈の採掘に成功すれば、クレジットが支払われ、宇宙船はかれらのものとなるだろう。
 プロスペクターのなかに、シュタイナー・ハンセンという男がいた。かれは幸福だった。ずっと憧れてきたことが叶ったのだから。
 ある日、プロスペクターたちのもとに、難船したガローン人が転がりこんできた。ガローン人がトレゴンの〈第2種族〉であることを、ハンセンは知っていた。その存在がマゼラン星雲にたどりつくのに用いた搭載艇は、手酷く損傷していた。
 ガローン人に発する溢れんばかりのポジティヴなメンタル放射をハンセンは体験する。プロスペクターたちは難船者を受けいれ、一室をあてがった。
 それ以上のことはできなかった。なにかあるのに感づいて、競争相手たちがあたり一帯を監視していた。通信ひとつ、あやまった動きひとつで、ポジションは露見してしまう。シュタイナー・ハンセンとプロスペクターたちには1週間が必要だった。それだけあれば、鉱脈の位置を特定し、残った最後の金で権利を買うことができるはずなのだ。
 だが、ガローン人のメンタル放射は刻一刻と力をうしなっていく。ハンセンは、搭載艇の母船の所在を知らされる。ガローン遠征隊は3日後に局部銀河群のこの宙域を出立する、という。刻限までに帰投できなければ、難船者は余生を異人たちの中で送らなければならない。そして、異人たちの中で死なねばならないだろう。かれは、かなりの高齢だった。
 シュタイナー・ハンセンは、そう思うといてもたってもいられなかった。かれは、ガローン人を母船へ運ばねばならない、と仲間たちを説得した。
 プロスペクターたちは、ガローン遠征隊が銀河系を離れる寸前に、なんとか間にあった。
 プロスペクターたちが鉱山惑星にもどったときには、すべてが手遅れだった。すでにグラドのプロスペクターたちが鉱脈を発見し、権利を申請していたのだ。
 それでもなお、プロスペクターたちは勝利をえたのだ。あるいは、かれらにとっては空前絶後の凱歌を。ガローン人は故郷に還った。そこで子をなし、2年後、種族の儀礼所〈刻蹟の場〉で死んだ。
 そこで物語は終わる。
「さて、シュタイナー・ハンセン」ヘリオートスが訊ねる。「どう思うね?」
「まだよくわからない」人間は、声にすることなく疑惑を表明した。「いい話だ。波乱万丈とはいいがたいが、美しい。しかし、真実ではないだろう。ちがうかね?」
「誰にもわからないのだ、シュタイナー。これは、あるいはけっして訪れない未来への展望かもしれない。あるいは現実のものとなるかもしれない。このガローン人は幸福のうちに亡くなり、きみはそのことに寄与した。かれは後継ぎを遺した。その子があるのは、きみのおかげなのだ。すべてはひとりひとりの人間しだい。きみたち人間は、自分がいかなる力をもっているかを、まったく知らない。きみたちは、何もなしとげることはできない、大宇宙の潮流の中で自分たちはあまりに卑小な一要素にすぎないと信じ、あきらめてしまう」
「何が言いたいんだ、ヘリオートス」
「わたしが言いたいのは、シュタイナー、きみにはヴィジョンが必要だということだ。プロスペクターとしての暮らし以上のもの。プロスペクターのハンセンが重要なのではなくて、特定の倫理的概念を体現する人間であることが大切なのだ」
「そんなヴィジョンは持ちあわせていない。それとも、ご用意願えるとでも?」
「ヴィジョンはきみの内にある。ただ埋もれているだけだ。それをふたたび呼び覚ます道がある。きみはみずから信じるものを実現していかなければならない。きみがガローン人に出会い、援助できるなら、そうしたまえ。ひとつの世界を救うことができるならば、ためらってはいけない」
「わたしの知るかぎりでは、何かをただで手に入れることはできない。代償に、何を支払えと?」
 ヘリオートスが笑ったかのようだった。「代償などとは言うまい。きみはある巨大な総体の一部になるのだ。きみの宇宙的天命なのだよ、トレゴンに属すことは」
「たちの悪い冗談か? LFTの職員には、宇宙的天命などない」
「シュタイナー・ハンセン、きみはほんとうにそう信じているのかね?」
 と、心のうちで声が訊ねた。
―― Perry Rhodan-Heft Nr.1900


シャバッザ/日誌の言葉

 人はわたしを〈角なし〉と呼ぶ。わたしに角がないからだ。
 人はわたしを〈影〉と呼ぶ。誰も真の姿を見たものがないからだ。
 人はわたしを〈翼まとうもの〉と呼ぶ……。なぜかを知った日は、おまえの最期。
 わたしには、敵にさしむける大艦隊はない。多くの兵もない。だが、過去の秘密を知っている。悪魔を解放することも、囚われの魂を知るよしもない戦争へと送りこむこともできる。
 わたしは9基の〈微小第五列(ナノ・コロン)〉をもっていた……。8基は戦場へと投入しうしなった。しかし、まだ1基は残してある。
 おまえがそこまで来ているのはわかっている、ペリー・ローダンよ! 見えはせずとも、感じられる。おまえこそトレゴンの〈第6使徒〉、わが太古よりの宿敵にして、彼此両岸あまねき世界における対立者。
 〈力の武器庫〉が、おまえのため用意されていたはずだろう? そのはず「だった」のだ。事態はおまえにとって向い風となった。〈武器庫〉は、わたしに対する兵器として投入される以前に、愚かな行為によって破壊されてしまった。
 トレゴンは、瀕死の態で倒れ伏している。
 わたしがそうなるように手を打ったのだ。
 だが、トレゴンは打ち砕かれてはいない――そして、そのように手を打ったのが、おまえだ。〈力の武器庫〉を一日とて得てはいないというのに……。理解できない。
 おまえこそが敵だと聞いている。だが、このわたしが〈武器庫〉も故郷ももたぬ〈第6使徒〉に遅れをとろうなどとは、聞いてはおらぬ。
 わたしは、みずからそのわけを探らねばならなかった。いまではわかっている。わたしがおまえを見くびるなどと、考えないことだ。
 わたしはここ、闇の中に立ち、おまえを待つ。わたしのもとへ来たらんと欲すなら、光の輪をくぐりぬけねばならない。
 ペリー・ローダンよ、早く来い! わたしはもう、待ちきれない。
―― Perry Rhodan-Heft Nr.1926


 青い光に満たされた〈バオリン=デルタ空間〉で、〈トレゴン評議会〉の使者ヘリオートスの来訪をうけるペリー・ローダン。ヘリオートスは告げる――テラナーはトレゴン連合の〈第6種族〉に選ばれた。ペリー・ローダンには、テラナーの代表者として、〈トレゴン評議会〉と〈第6種族〉を仲介する〈第6使徒〉の任をになってもらいたい。
 ローダンは、〈第6使徒〉になった。
 しかし、〈第6種族〉の参入によって〈創設の年〉をむかえようとするトレゴン連合は、「敵」の代理人シャバッザの策謀によって、すでに奈落の淵をのぞきこまされていた。
 〈第2種族〉ガローン人は、種族の攻撃衝動を封じた〈竜穴〉の暴走のため、おのが銀河プランタグーを荒廃させることになった。〈第4種族〉ノンッゴの文明は、〈カオスメイカー〉グージレズがひきおこした情報網ニューロン・システムのオーバーフローのため、混迷の淵に沈んだ。〈第3種族〉バオリン=ヌダは、みずからの開発した悪夢の兵器〈ナノ・コロン〉の猛威を前に、わずか数体を残して滅亡した……。
 そして、シャバッザは、当初〈第6種族〉に選任されたことすら知らなかったテラナーにも照準をあわせていた。ゴエッダとトルカンダーによる銀河系侵攻は、その第一手にすぎない。〈ヘリオートスの堡塁〉は破壊工作のために暴走し、また、遠いプイドル銀河では、次の一手ジィ・ネヴェヴァーが覚醒する。
 ヘリオートスはローダンに〈第6使徒〉の船となるはずの《トレゴンVI》の探索を命じる。かつて人類の宇宙船として《ソル》と呼ばれていた巨船は、いまシャバッザの手中にあるという。


1 銀河系/新ギャラクティカム

 シャバッザが銀河系にさしむけたゴエッダによる甚大な被害。くわえて、暴走した〈ヘリオートスの堡塁〉は、カルカッタとテラニア、両都市の一区画を宇宙のかなたの見知らぬ大地と交換する。カルカッタは〈第4種族〉ノンッゴの〈天輪〉ケントイレンと。テラニアのアラシャン街区は未知銀河の惑星と。
 テラニアに出現した異星の一角には、その惑星に略奪のためにおりたっていた種族ジェルロの城《グーシャラン》があった。市民を人質にとったジェルロにLFT軍が手をこまねいているうちに、テラニア全域は蹂躙され、廃墟と化した。
 銀河系の人々は、〈ヘリオートスの堡塁〉のソル系来訪によって、はじめて〈トレゴン連合〉を知った。つづいて、ソル系第4惑星のピルツドームからヘリオートスがあらわれる。〈トレゴン評議会〉の代弁者ヘリオートスはテラに語りかけた。
 ともに平和をもとめ、平和のために闘う――トレゴン連合の理想は心ふるわせるもの。その呼びかけは、近年の銀河内政争に倦んだテラナーたちのこころに深く浸透していった。
 だが、理想が現実になる日は遠い。
 間近にせまる〈第一テラナー〉選挙では、国粋主義をかかげる自由統一党が優勢となりつつある。自由統一党のソルダー・ブラントが、タカ派の豪商ジョスカー・ジャンキネンの支援もあって支持率をのばし、現職のパオラ・ダシュマガンは苦戦をしいられていた。

「トロカンの騒ぎも、ゴエッダもジェルロも、ダシュマガンのせいではないのだけれど」
「かかげた人命尊重を……」
「弱腰~っ」
「と、謗られては、目もあてられない」

 一方、銀河系政局も予断を許さない。
 アルコン水晶界の極秘計画を察知したアトランは、ひそかに調査を開始。〈ミルカンドル計画〉の関係者が、次々と姿を消している。流刑惑星に連行し、記憶を処理してまで守らなければならない計画とは、いったい何?
 アトランは〈ミルカンドル計画〉の名を公にする。これをうけて、アルコン〈水晶帝国〉は皇帝ボスティクの名においてやむなく計画を公開した。
 ミルカンドル――それは、アルコンIに築かれた一大都市。トルカンダー侵攻で失われたギャラクティカム議会場〈ヒューマニドローム〉に代わる施設。あらゆる種族に快適な環境を提供するこの世の楽園。
「ギャラクティカーの代表者たちよ、アルコンIへ、ミルカンドルへ来たれ」――〈水晶帝国〉建国以降のアルコンの右傾化を知る銀河系の人々は疑心にかられる。これは真摯な呼びかけなのか、それとも壮大な罠?
 しかし、平和を愛する海棲種族ソルモスは、その善意を信じたいと思った。独自の技術文明をもたないソルモスだが、銀河系の種族に新生ギャラクティカム参加を訴えることはできるはず―― 一群のソルモスが種族初の銀河系巡回を敢行する。

「ゾウアザラシに似たソルモス」
「みんな~ミルカンドルにいこーよぉ」
「みんなの反応、つめたいです」
「でも、ゾウアザラシめげません」
「でかい図体でのたのたしながら」
「黒い瞳をうるうるさして」
「喧嘩はよくないよ~」
「なかよくしよーよぉ~」
「みんな~ミルカンドルにいこーよぉ」
「ふごふごぉ~」
「……確信犯?」
「……こいつら、じつはけっこうわかってやってるみたい」

 どの惑星でも、ソルモスは冷たくあしらわれる。しかし、「平和と協調こそ未来へとつづく唯一の道」と説くソルモスの言葉には真実があった。疑念を捨てきれず銀河大戦への道を歩み、終点に待つのは何なのか――ソルモスが去ったあと、人々は残された言葉を反芻する。
 かくして、銀河各地からミルカンドルに代表団が集いはじめる。もちろん、誠意からだけではない、さまざまな思惑があった。諜報機関が暗躍する平和会議は一触即発。キャメロット代表として水晶界の地を踏んだロナルド・テケナーは、盗聴戦略をたくらむアルコン諜報部を一蹴し、これまで公には活動できずにいたキャメロットを銀河系の一勢力として認知させることに成功する。
 新ギャラクティカムの前途は多難であった……。


2 ダ・グラウシュ/ゾフェンゴルンの環

 〈第6使徒〉ローダンは、シャバッザの手中にあるという《ソル》をもとめ、二重銀河ワールプール――NGC5194とNGC5195、現地語でダ・グラウシュとザルメンゲスト――を訪れる。船を失い、この宙域特有の災害〈ボイラー震〉に遭遇し立ち往生したローダン一行。やがて知己をえた〈震動探究者〉アイスマー・ステールメンゴルトの船に同乗することになる。
 ワールプール二重銀河のはざまの宙域〈ボイラー〉に起因する災禍〈ボイラー震〉は、時には恒星系さえ破壊する。幾世紀にもわたる〈震動探究者ギルド〉の研究も甲斐なく、いまだ予報すら万全ではない。
 〈ボイラー震〉襲来におびえる銀河に、広大な星間帝国は生まれない。だから、ジェルロのような広域略奪者の跳梁をおさえる勢力もまた、存在することはなかったのだ。ジェルロ――そう、ダ・グラウシュ銀河こそは、〈ヘリオートスの堡塁〉がテラニアにもたらした無法種族の故郷。
 ジェルロの《グーシャラン》と交換に惑星トリムへ転送されたアラシャン街区の人々は、ジェルロの残党を撃退し、温和な原住種族トリマーとの友好関係を築いていた。
 ローダン一行は、ダ・グラウシュ銀河でテラ技術を商う〈カンパニー〉の販路をたどり、自由商業惑星クリスタンでアラシャンの船《グッド・ホープIII》との合流をはたす。

 アラシャンにたどりついたペリー・ローダンは、〈第一市民〉ステンダル・ナヴァホと保安相ジア・ド・モレオンに、《グッド・ホープIII》譲渡とTLD工作員による支援を要請する。だが、ダ・グラウシュ銀河で生きることをようやく決断したばかりのアラシャンの人々には〈第6使徒〉ローダンを援助する余力はなかった。
 宇宙船も、スクラップを寄せ集めた《グッド・ホープIII》と《アルヴァレズ》、わずか2隻の手持ちしかない。ダ・グラウシュ各勢力が〈カンパニー〉の正体を探る動きも執拗で、ナヴァホとド・モレオンは対策〈ロビンソン計画〉の準備に追われていた。
 しかし、ローダン到着のわずか数日前、来訪した謎の宇宙船〈ヴァーチャル・シップ〉がアラスカ・シェーデレーアを連れ去ったこともある――うかがい知れぬところで事態が進行していることは、ふたりのアラシャン首脳にもわかっていた。そこで、ふたりは、3名のTLDスペシャリストをローダンに同行させることにする。

 トリマー宇宙船の乗客となり、ダ・グラウシュ南部に向かうローダン一行の目標は、〈震動探究者ギルド〉の中枢〈ゾフェンゴルン〉。素性を偽り、〈震動探究者ギルド〉の本拠に足を踏み入れたテラナーたちは、ステールメンゴルトに再会する。少し前、ステールメンゴルトは、ギルド司令部〈ディレクトリウム〉――10名の〈ディレクター〉が構成する委員会――の欠員選挙に立候補したが、資格が充分でないことから落選していた。

「資格とは?」
「〈ボイラー震〉にみまわれた惑星にとじこめられて、サバイバルした経験があること、なんだけれど……」
「今回の当選者なんか、過酷な体験で精神こわれてて、当選直後に発狂死」
「まさか、ディレクター全員が……?」
「よいよい?」

 ステールメンゴルトの船に同乗したローダン一行は、ヘリオートスが与えた《ソル》目撃座標――センチュリー星域――を探索するが、おおかた予想していたとおり、徒労に終わる。帰投した〈ゾフェンゴルン〉で、ローダンは中央ポジトロニクス〈リング大計算機〉に「球形の船」の情報をみつけた。惑星ツヨで、おそらく〈ボイラー震〉で大破したとみられる《ソル》のコルヴェットの残骸を発見。しかし、現住種族ツヨカンの伝承からわかるのは、〈コーラゴ〉と呼ばれる種族が搭乗していたことだけ。
 ふたたび〈ゾフェンゴルン〉に帰投した一行は、〈リング大計算機〉が何者かの手で操作されていることに気づく。たったいま、かれらが報告した《ソル》関連情報すら消去されているのだ。それほどの権限をもつものは、9名のディレクターだけ……。
 おなじころ、艦長フィー・ケリンド指揮下の《グッド・ホープIII》は、〈ロビンソン計画〉で必要なホワルゴニウムの調達に奔走する途中、惑星クレ・パインでダ・グラウシュ銀河の水準をはるかに超えた技術をもつアンドロイドたちと遭遇、交戦する。多くの犠牲をはらって敵ステーションを破壊し逃走する《グッド・ホープIII》は、アンドロイドたちがダ・グラウシュ全域に秘密情報網を構築している事実をつかんでいた。かれらの名は――〈コーラゴ〉。


3 プイドル/侵蝕する夢

 銀河系から1600万光年をへだてた島宇宙プイドルで、脅威が目覚めた。
 シャバッザの暗示下にある4人のギャラクティカー――グッキー、イホ・トロト、ジュリアン・ティフラー、マイクル・ローダン――が、数千年前にノンッゴが封印した〈プイドルの夢女〉ジィ・ネヴェヴァーを惑星クラヨの時間の牢獄から解き放ったのだ。
 数万年前、高度文明種族ネヴェヴァーが超知性体への進化をきらい、高次勢力からうけた使命を代行させるために創造した超存在グゥとジィ。使命の最初の段階、プイドルと隣接銀河の平和統一を遂行する途中で、〈夢使い〉グゥは抵抗する種族ヴァルミル人の手にかかって果てた。〈夢女〉ジィはパートナーをなくしたことで変調をきたし、〈悪夢〉をもってプイドルと隣接銀河を支配しようとした。そこを、トレゴンの〈第4種族〉ノンッゴがバオリン=ヌダの〈時間魚雷〉で封印したのだ。

「ジィ・ネヴェヴァー――通常空間に具現する仮の肉体〈宿体〉は身長2.5メートルのでっかいイモムシ」
「ボディは、五次元結晶トロニウム・アジント――テラでいうホワルゴニウム――製」
「ポテンシャルの大半は超空間にあるらしいけれど……」
「存在のためには〈宿体〉が必要らしい」
「で、こいつが、惑星クラヨのトロニウム・アジント鉱脈を媒介に、星域規模の範囲で影響をおよぼし、知性体の記憶を書きかえていく」
「そういえば、オレ、子供のころからジィ様を尊敬してるような気がする」
「うちも、とうちゃんの工場が傾いたとき、ジィ様の融資がなかったら、一家心中してたかも」
「高校時代に好きだったコによく似ててさ……」
「小学校のとき飼ってた亀が……」
「……う」
「……こわすぎるぞ、ジィ!」
「たいていは忠誠心を植えつけるだけらしいけどね」

 悪夢のインパルスは着実にプイドルの種族たちを侵蝕していった。
 イホ・トロト、グッキー、ティフラーの3人はシャバッザの暗示をのがれ、ジィ・ネヴェヴァーの〈悪夢〉をのがれて、危機打開の方策をさがす。だが、マイクルはシャバッザが埋めこんだ生体チップに操作され、ジィ・ネヴェヴァーの協力者として、徐々に危機の矛先を銀河系に向けさせようとする。
 マイクルは、まず惑星アンコルムを掌握する。そこは、4万年前〈夢使い〉グゥ・ネヴェヴァーを殺害したヴァルミル人のかつての工廠惑星。マイクルが改良した製造ラインは、当時より強力な兵装と駆動系をもつ武装艦を送りだしていく。
 グッキーたち3人は、球状星団ロイ・カマルの惑星ナ・カルに住む謎の〈賢者たち〉に助けをもとめる。〈賢者たち〉または〈触れるべからざるもの〉と呼ばれ、「未来を知る」といわれるエネルギー種族は、さまざまな形でプイドル諸種族に助言をあたえてきた。だが、なぜか〈賢者たち〉は3人とのコンタクトを拒む。
 惑星ナ・カルで成果をあげられなかった3人は、さしせまる〈夢女〉の脅威を前に同盟したラヴ人、ギンコースらのプイドル種族の協力をえて、過去の謎を追う。かつてグゥ・ネヴェヴァーの旗艦であり、その殺害の舞台ともなった《インツラ=タル》が、現在もプイドル銀河の星の海を放浪している。《インツラ=タル》は、いまはコラヴ人のもの――そして、「〈創造神ヤンマミフ〉を崇めるオル教団の〈聖なる船〉」と呼ばれているという……。
 3人が《インツラ=タル》に向かおうとしたとき、危急の報が告げられる――〈夢女の将軍〉マイクル・ローダンが惑星ナ・カルに侵攻!
 惑星破壊をほのめかし、強引に地表におりたったマイクルは、エネルギー生命体といわれていた〈賢者たち〉が、プシ・ポテンシャル――ある種の精神感応能力――をもつヒューマノイドにすぎないことを知る。〈賢者たち〉は惑星ナ・カルの産ではなく、何者かによって移住させられ、託されたものを守護する使命をおびている。
 グッキーたち3人は、ラヴ人やギンコースの連合艦隊とともに急行。わずか数隻のマイクル艦隊を包囲した。マイクルは〈賢者たち〉を脅迫し、連合艦隊は〈賢者たち〉の強力なメンタル攻撃にみまわれる……。
 そのとき、探知機が異常を告げた。〈賢者たち〉が能力を攻撃にふりむけたとき、惑星ナ・カルの地底に、これまで〈賢者たち〉のプシ・ポテンシャルが遮蔽してきた大量のトロニウム・アジントの反応があらわれたのだ。〈夢女〉の拠点惑星クラヨさえ凌駕する膨大な量のホワルゴニウム。すなわち、守護を委託した何者かとは――ジィ・ネヴェヴァー!
 地底の鉱脈で、ホワルゴニウム塊のひとつがネヴェヴァーの形をとる。充分な量のホワルゴニウムさえあれば、〈夢女〉は瞬時にして〈宿体〉を転移できる。あいだに横たわる距離が何万光年あろうとも……。
 ジィ・ネヴェヴァーの〈夢〉が連合艦隊に襲いかかる。リニア空間へ脱出できたのは、計算脳にきりかえたイホ・トロトが操船する《オクラ》ただ1隻だけ。
 惑星クラヨと惑星ナ・カルの膨大なホワルゴニウムをともに手中にしたジィ・ネヴェヴァーの〈夢〉は影響圏を拡大し、プイドルの諸世界は次々と陥落していく。
 プイドル銀河を覆う不安と恐慌の中、グッキーら3人はようやく伝説の《インツラ=タル》にたどりつく。船尾を失った――ヴァルミル人との戦いで破損したという――〈聖なる船〉で4万年前の記録をひもとく――かつて、ヴァルミル人は〈夢使い〉と〈夢女〉による支配をきらい、グゥ・ネヴェヴァーに捕獲兵器〈トロニゼーター〉を投入した。捕獲――〈夢使い〉は消滅したわけではない?
 とすれば、グゥ・ネヴェヴァーは、いまどこに?


4 ダ・グラウシュ/ディレクター10

 アンドロイド種族コーラゴとの交戦で損傷をうけた《グッド・ホープIII》は、恒星に転落する寸前を僚艦《アルヴァレズ》に救助され、アラシャンへと帰還。持ち帰った1体のアンドロイドの遺骸からは、ダ・グラウシュを覆う諜報ネットワークの情報が確認された。アンドロイド種族がシャバッザの麾下にあることはほぼ確実。
 事態を憂慮したジア・ド・モレオンは、新情報をローダンに伝達するため、修理中の《グッド・ホープIII》の艦長フィー・ケリンドとスキル・モルゲンシュテルンを〈ゾフェンゴルン〉に派遣する。
 そのころ、〈震動探究者ギルド〉の中央ステーションでは、ローダンたちが〈ディレクトリウム〉の秘密にせまろうとしていた。欠員の生じた委員会の今後を協議するため、すべてのディレクターが《エンピリウム》に集うという。姿を見せたことがほとんどないという〈ディレクター10〉さえも。
 〈リング大計算機〉の情報操作が判明してから、ギルドの最高権力者〈ディレクター10〉がシャバッザの傀儡ではないか、という疑念が生まれていた。デフレクター・スクリーンに隠れて見守るローダンたちの前で転送機からあらわれた〈ディレクター10〉。発する絶大なカリスマ。傀儡ではない、シャバッザ本人だ!――とローダンたちは確信する。

「絶大なカリスマ?」
「ラムーニ鳥という、カリスマの強いヒトにしかなつかない鳥が、それはもうバサバサと群れをなしてまとわりついて……」
「で、肝心のシャバッザの顔とか姿とかは……?」
「なんと、鳥のおかげでほとんど見えなかったらしい」

 ディレクター会議のあいだに〈ディレクター10〉の個室へと潜入したローダンたちは、幾多の罠をかいくぐり、ポジトロニクスをハッキング。盗み見たのはシャバッザの手記。シャバッザは、「ある存在の命をうけ」て、ただひとり〈トレゴン連合〉を破滅へと追いやるために戦ってきたのだという。さらに、ローダンたちは偽装転送機を発見。それは、おそらくシャバッザの拠点へ通じる道。しかし、そのとき、〈ディレクター10〉が部屋にもどった……。

「発見されたローダンたち、あっけなく〈ディレクター10〉を射殺?」
「弱すぎる、と思って調べると、そいつはどうやら影武者アンドロイド」
「絶大なカリスマ――というのは?」
「ラムーニ鳥の群れは、じつはプロジェクター投影だったとさ」
「で、影武者アンドロイドの顔とか姿とかは……?」
「なんと、こんがり焼けてて、よくわからなかったらしい」

 アラシャンから到着した2名のTLDスペシャリストとも合流をはたし、ローダン一行は人質をよそおうステールメンゴルトをつれて〈ゾフェンゴルン〉から逃走。〈震動探究者ギルド〉は、つまるところシャバッザの手駒でしかないのだ。
 情報分析の結果、コーラゴのステーションの大半が諜報活動に適した人口密集星域に配置されていることがわかっていた。ただひとつの例外――惑星ロキルドが、その中枢かもしれない。
 ロキルドに潜入したレジナルド・ブルとスキル・モルゲンシュテルンは、その地がコーラゴの極秘工廠であることを知る。コーラゴはシャバッザの命をうけ、数世紀前から〈ボイラー〉に進入できる特殊船の設計にあたっていた――これまでのところ、成果はあがっていなかったが。
 発見され窮地に陥ったモルゲンシュテルンは、みずからの脳を基地頭脳と直結。コーラゴ・ステーションを制御下に置くが、代償として肉体を失う。コーラゴの船に自我を移し、衝動に駆られるままに未知の目標「蝶の銀河」へと発進するモルゲンシュテルン。かれはブリーに、基地頭脳から読みとった中枢ステーションの座標を伝える――それは、いみじくもセンチュリー星域を指していた。

「なんかシャバッザ……ちょっとまえに言ってたこととちがう」
「大艦隊はない~」
「多くの兵もない~」
「……うそつき~」
「さすが、ローダンのライバルだけのことはある」


5 銀河系/無彩視界

 やあ! やあ、きみ!
 ぼくのこと、知らないって? なるほど、でもわかる、きみはぼくを好きになる。ぼくと知り合った人たちは、たいていちょっとするとぼくに好感をもってくれた。ぼくにはできるんだ、人がぼくを好きになるように。
 きみだってそうさ。
 ぼくらは、とてもとてもいい友だちになるはず。ぼくらふたりは。絶対さ。きみは楽しくてしかたなくなる、絶対にさ、いつもぼくのそばにいることも。それに、ぼくを助けることも。
 そう、ぼくには助けがいるんだ。まあ、ときどきね。悪意に満ちた危険な力が、のべつまくなしにぼくを狩りたてて、脅かす。鼻持ちならない色合いで、苦しませ、悩ませ、ぼくのかわいそうな頭の中をぐちゃぐちゃにしてしまう。とてもつらい。
 ああ、そうさ、つらい目にあわされるのは好きじゃない。だから、いるんだ、きみの助けが――友だちが。たくさんの友だちが。きみみたいな。ほら、ぼくの友だちになって、助けようって気になってきたみたいじゃないか。まったくの自由意志から、きみはそうするんだ。それもぼくのなしとげたこと。
 きみの意志にそわないことは、なにひとつおこらない。保証する。おきることは、そうなるようにきみが望んだことだ。自発的に。たとえば、そう、必要にせまられて、きみが死ななくちゃならないとする。そうしたら、それもまた、きみの意志。まったくの自由意志で、きみは喜んでうけいれる。死を。
 素敵じゃあないか?
 ああ、そうそう……。
 ぼくのことはヴィンスと呼んでおくれ……!
―― Perry Rhodan-Heft Nr.1936

 アコンの商船をよそおった〈ギャラクティック・ガーディアン〉の船《ラミラ》が、ミマスの〈パラ異常犯罪者拘留施設(PAKS)〉――通称〈パラ・ブンカー〉を襲撃。17年間眠りつづけた〈死のミュータント〉ヴィンセント・ガロンを覚醒させる。ガロンは〈プシ・コンヴァーター〉能力をもつブルー人の少女ツユラ・アジクを暗示下におき、《ラミラ》で逃走。
 〈ギャラクティック・ガーディアン〉はなぜ自分を解放したのか――ガロンは《ラミラ》で入手した唯一の情報〈コーラ・シントロニクス社〉の名前を手がかりに、テラをめざす。
 〈LFT全権委員〉キストロ・カンとTLDの新長官ノヴィエル・レジドルは、第一級警戒態勢を敷き、ソル系を封鎖。しかし、TLDはアラシャン街区とともに本部である〈タワー〉と1万名のスペシャリストを失い、充分な機能をはたせない。幾度となくガロンを追い詰めるものの、ツユラが増幅するガロンの能力に打つ手はなく、犠牲者が増えるばかり。唯一の成果は、謎の〈クォトール〉という概念。
 ガロンの能力のひとつは超空間を見る力。〈クォトール〉はその超空間から語りかけた――17年前、能力の覚醒により、ガロンの視界は色を失った。しかし、悪の〈色〉は見える。超空間にまで突出するほどの悪の権化は〈色〉をもってガロンの視界にあらわれる。その〈色〉を滅殺せよ、と〈クォトール〉はガロンに命じたのだ。
 潜伏中のガロンは、ふと見たテレビニュースに〈色〉を見つける――それは、銀河系の平和統一を訴える海棲種族――ソルモス!
 〈コーラ・シントロニクス社〉にたどりついたガロンを、タカ派の豪商ジョスカー・ジャンキネンが迎える。ジャンキネンが糸をひいたガロンの脱走にはじまる一連の事件は、現政府に対する市民の不信をいっそうあおりたてた。そして、暗示能力をもつミュータントとの同盟は、政界の黒幕をめざすこの豪商にとってはかりしれない利益をもたらす、そう信じているのだ。
 ガロンは、アルコンへの道を切り拓くためにジャンキネンと手を結ぶ。

「人間を電子レンジでチンするミュータント」
「それが、超能力を増幅するブルー人の少女をともなって」
「ぱわーあっぷ?」
「しかも、性格が……」
「ようこそ! ぼくのマンションはどうだい?~」
「ベイベー!」
「いいのかなぁ」

 おなじころ、ソル系第4惑星のピルツドームから、マークスに似たひとりの異星人があらわれていた。重傷をおった水素呼吸生命体は、意識をうしなう前にこう告げる――わたしはモーゲナ、トレゴンの〈第5使徒〉……種族の名はガルラー……故郷銀河チェアルスが、グァング・ア・ヴァーに脅かされている……テラナーに至急救援を請う――


6 プイドル/〈夢使い〉の時間

 〈聖なる船〉――《インツラ=タル》はグッキーたち3人を乗せたまま、聖地〈大宇宙の心央〉に向かう。
 《インツラ=タル》はスペレイン星系の第17惑星スミルノに接近。エネルギー渦流〈大宇宙の心央への坑道〉をぬけて巨大ガス惑星スミルノの大気圏へと降下する。到達した〈ヤンマミフ〉の神殿とは、失われた《インツラ=タル》の船尾。そこには、〈トロニゼーター〉に囚われ、身動きもならない〈夢使い〉がいた……!
 〈夢女〉ジィの暴走をとめられるのは〈夢使い〉グゥ・ネヴェヴァーしかいない――グッキーは意を決し、〈トロニゼーター〉のスイッチを切る。
 グゥはジィと合体し、「妹」の正気をとりもどさせようとする。だが、4万年の歳月をかけて憎悪を育んだ〈夢女〉とトロニウム・アジントの欠乏から衰弱した〈夢使い〉、両者の力の差は歴然。グゥは自我を失い、さらに強大な力を手にした〈夢女〉だけがのこった。
 グッキーら3人は最後の希望を追う――《インツラ=タル》の記録から〈トロニゼーター〉開発者ヴァゴ・インタレンの足どりをたどり、中性子星ペリコルをめぐる極秘ステーションにたどりつく。そこで、グッキーら3人は、タミジャクム帝国の崩壊後も研究をつづけた科学者たちの遺産、第2の〈トロニゼーター〉を手に入れる。
 惑星クラヨと惑星ナ・カルの2ヶ所を自在に転移する〈夢女〉に、同時に2基の〈トロニゼーター〉が投入される。ナ・カルに銀河系侵攻艦隊を集結させつつあったマイクル・ローダンは、拘束された〈夢女〉を解放しようとする。しかし、〈トロニゼーター〉の歪曲場が探知機器の機能を封じ、さらに〈夢女〉の恐慌は〈夢〉にとらわれた奴隷たちに伝播し、混乱を煽る。そして、ついに……改良〈トロニゼーター〉は最大出力でトロニウム・アジントに宿る〈夢女〉を破壊した。
 クラヨとナ・カルはトロニウム・アジントが噴き出すエネルギーに包まれ、炎上、崩壊していく。
 第3の災厄――ジィ・ネヴェヴァーは存在をやめたのだ。


7 ダ・グラウシュ/センチュリーI

 惑星ロキルドで入手した座標はセンチュリー宙域の一星系を示していた。だが、そこには惑星もステーションも存在しない。
 モルゲンシュテルンが残したデータを信じるローダンは調査を続行。やがて、恒星の自転偏差から、惑星規模の質量が恒星センチュリーをめぐっていることが判明する。想像を絶する対探知対策が講じられたこの惑星こそ、シャバッザの拠点、センチュリーI!
 そして、〈ゾフェンゴルン〉の偽装転送機から抽出した設定値は、まさしくセンチュリーIの受入ステーションへの道を開くもの。出口は、シャバッザその人の居住区……潜入に成功したローダンら6名は偵察を開始する。そこはコーラゴたちの一大工業世界。2万2000隻の大型戦闘艦と宇宙要塞118基は、おそらくダ・グラウシュ最強の兵力。
 潜入部隊のひとりトラブゾン・カレットは巨大な黒いアンドロイドを発見。身長は4メートル近い。動力が切られ、エネルギー・バリアに覆われて横たわっている。そのシントロニクスにアクセスして情報を抽出しようとしたとき、黒い巨人は覚醒する。それは〈1-コーラゴ〉、全コーラゴの雛型にして始祖!
 転送機に通じる撤退路を〈1-コーラゴ〉にふさがれたローダンたちは、窮地に陥る。さらに、巨人との戦いは、他のコーラゴたちを呼び寄せた。転進また転進。
 途中、ダ・グラウシュ監視ネットワークの中枢センターを発見した一行は、シャバッザがアラシャンの詳細なデータをすでに入手していたことを知る。おそらく、シャバッザは、アラシャンがあまりに弱小な勢力であるがために、見逃しているだけ。
 モンキーの陽動作戦で転送機への突破をはかるテラナーたちの前に、ふたたび〈1-コーラゴ〉が立ちはだかった。6人の集中砲火と、爆弾を満載したグライダーの誘爆に、さしもの強靭なアンドロイドも爆散。転送機を作動させる一瞬、ローダンはつかのま、上空に出現した金色の巨船を目撃する――《ソル》!
 アラシャン帰還後、ローダンは修復が完了した《グッド・ホープIII》とTLD工作員1000名の貸与を再度要請。アラシャンへの脅威が明白なこと、また、モンキーの進言もあって、逡巡のすえド・モレオンとナヴァホは要望を受諾した。
 トラブゾン・カレットたちの懸命の分析の結果、持ち帰ったシャバッザ本人のデータバンクのコピーから、一連の通信シンボルが抽出された。それは〈ターミネート指令〉――すなわち、コーラゴの機能停止コマンド。
 準備を整え、ついに《グッド・ホープIII》は発進する。

 トリティマー系に新たなジェルロの城《ツロフェックス》が近づく。《グーシャラン》部隊の壊滅を生きのびたジェルロの共生種族フートの1体が、ひそかに呼びよせたのだ。〈夢幻ダンサー〉ジャキンタのベンジャメーンとテレパスの少女テス・クミシャに発見されたフートは自害。だが、すでに《ツロフェックス》はアラシャンの情報を掌握していた。
 〈ロビンソン計画〉発動――アラシャンの人々は、手持ちのわずかなスペースジェット、《グーシャラン》残存艦艇を利用したプラットフォーム、〈ヴァーチャル投影装置〉を駆使して、ジェルロの城を破壊。アラシャンは、かろうじて命脈をたもった。

「テス・クミシャ――17歳」
「視界はモノクローム……」
「う……なぜ、ヴィンスとおなじ?」


8 銀河系/第5使徒

 重傷の〈第5使徒〉モーゲナは、マークス大使館惑星マーコラから急行したマークス医師団の尽力で、一命をとりとめた。
 モーゲナはキストロ・カンとアトランにおのれの種族ガルラーの歴史を語る――5万年前、恒星転送機によって未知宙域に島流しとなった、マークスの末裔の物語を。
 チェアルス銀河に漂着したマークス――後のガルラーは、その宙域の超知性体〈ニサール〉に導かれながら、平和的手段で銀河内共同体を建設。やがて訪れた〈第4種族〉ノンッゴと協力して、襲来した〈恒星虫〉グァング・ア・ヴァーを〈恒星金庫〉に封印。その功績を理由にトレゴン連合の〈第5種族〉としてむかえられた。
 モーゲナが〈第5使徒〉に就任した直後、隣接する小銀河アルギオンから20万隻の艦隊がチェアルス銀河に侵攻した。宗教的信念に突き動かされる複数種族の連合船団〈アルギオ放浪者〉を前に、虚をつかれたチェアルスの種族たちは〈恒星金庫〉周辺星域の占拠を許す結果になった。
 〈恒星金庫〉と制御惑星タガルムを奪回しなくてはならない。グァング・ア・ヴァーの解放は、チェアルスの滅亡……ひいてはあらゆる島宇宙への脅威を意味するのだから。
 モーゲナは《トレゴンV》で〈アルギオ放浪者〉の封鎖環を突破、重傷を負いながらも、惑星タガルムにそびえるピルツドームから〈無限への架け橋〉を渡った。ガローン人、バオリン=ヌダ、ノンッゴ――トレゴン種族の多くは〈創設の年〉を目前にして壊滅的な打撃をうけていた。〈第5使徒〉モーゲナには、〈第6種族〉テラナーのもとへおもむくよりほかに道はなかった……。
 だが、期待は裏切られた。〈第6種族〉は、〈第一テラナー〉選挙が決着するまで、救援要請への回答を保留したいというのだ。〈第5使徒〉は、アトランの勧めでミルカンドルに向かう――銀河系諸種族にグァング・ア・ヴァーの危機を警告し、〈アルギオ放浪者〉を除くための支援を要請するために。

「で、アトランとともにミルカンドルへ?」
「ところがアトラン――じつは皇帝殺しの汚名を着せられていて、目下〈水晶帝国〉では指名手配の凶悪犯」
「行けるわけがない」
「そこへ都合よく入った緊急通信」
「銀河系の辺境、惑星トラヴェルサンで事件?」
「おお、それはたいへんだ!」
「ようするに、逃げたんだね」
「……」

 おなじころ、〈死のミュータント〉ヴィンセント・ガロンは、自由統一党党首ソルダー・ブラントのギャラクティカム訪問を隠れ蓑に、ソル系封鎖を突破していた。宇宙ヨット《聖アマリナ》で、タカ派の豪商ジョスカー・ジャンキネン、暗示下においたブラント、ツユラとともにアルコンに向かう。
 ガロンとモーゲナ――水晶界の都市ミルカンドルで、ふたりの異才は対峙する。〈悪の色〉ソルモス抹殺をはかるガロンと、〈死のミュータント〉の超能力を無効化するモーゲナ。思わぬ強敵の出現に動揺したガロンは、〈第5使徒〉を人質にアルコンから逃走する。

「〈死のミュータント〉の超能力を無効化するモーゲナ?」
「〈プシ・リフレクター〉――ガルラーはたいていもってる能力らしい」
「相手が自分に向ける感情、メンタルな攻撃を投げかえす……?」
「ゾウアザラシ1匹を遺伝子爆破で惨殺したガロン――立ちはだかるモーゲナに自分の憎悪と力を投げかえされて半死半生」

 逃走の途上、ガロンは無思慮にもジャンキネンを殺害。ツユラの信頼も失い、孤独にさいなまれるガロンは、ソル系に針路をとる《聖アマリナ》船内で、再度モーゲナに対決を挑む。だが、結果は敗北。ガロンは昏倒し、意識を失う。
 ガロンが昏倒したことにより束縛を脱したソルダー・ブラントは、ジャンキネンの企みを告白し、立候補を辞退。選挙は現政権の勝利に終わった。
 しかし、モーゲナの訴えもむなしく、結果として、LFTとギャラクティカムはチェアルス銀河支援を保留した。無事トラヴェルサンから帰還したアトランの申し出により、《ギルガメシュ》を中心とするキャメロットの小艦隊、そして、惑星マーコラに駐留するマークス船10隻だけが、チェアルス銀河に発進する――モーゲナの強い希望から、いまだ昏睡から醒めないヴィンセント・ガロンとツユラ・アジクを乗せて。


9 過去/永遠の待機

 〈1-コーラゴ〉は、情緒エミュレーターを搭載し、感情をもつ特殊アンドロイド。
 かれは創造主を知らない。記憶は《マテリア》でめざめた瞬間にはじまる。指令は、いつか来る主人につかえ、メモリに蓄えたアルゴリズムにしたがいアンドロイド種族コーラゴを生産すること。
 《マテリア》は宇宙を放浪する工場。指揮官はトル・サマホ。〈1-コーラゴ〉は指揮官の姿を見たことはない。感情をもたぬ無機的なロボットたちが原材料を搬入し《マテリア》の製品を運び出すのを見ながら、時だけがすぎていく。
 《マテリア》を訪れたロボット〈カイロル2世〉は語る――《マテリア》本来の使命は〈究極素〉の製造、と。しばらくして、〈カイロル2世〉は、いつか訪れる〈1-コーラゴ〉の主人に用立てるために亜鈴型の巨船――《ソル》を移送してきた。〈1-コーラゴ〉は、青写真にもとづいて亜鈴船を改装するという任務をうけたのだ。
 《ソル》の乗員ソラナーと艦載頭脳〈セネカ〉――〈1-コーラゴ〉は孤独を癒すための話相手をえた。
 《ソル》乗員――ソラナーは、かつてトル・サマホの命をうけて活動していたという。だが、いまは反逆者として退船させられたソラナーは、船の奪回をたくらみ蜂起した。〈1-コーラゴ〉はやむなく首謀者を処刑。まもなく、カイロル指揮下の別の船がソラナーの生存者をいずこかへと運び去っていった。
 《ソル》の艦載頭脳――〈セネカ〉も反旗をひるがえし撤去された。やがて、改装作業の中で《ソル》の運行に〈セネカ〉が不可欠であることが判明すると、艦載脳はふたたび設置された。だが、組み込んだ安全機構〈ソルブレイン〉のために、もはや〈セネカ〉は〈1-コーラゴ〉と自由に語り合うことはできなくなっていた。
 ノルガン=テュア銀河、コスモヌクレオチド・ドリフェル……あまたの銀河を通りぬけ、あまたの奇蹟を眺めながら、けっきょく〈1-コーラゴ〉は《マテリア》の外を何も知らないままだった。永遠とも思える、はてしなく続く待機の時間。孤独にさいなまれる〈1-コーラゴ〉は、みずから情緒エミュレーターのスイッチを切った……。
 ふたたび、感情のスイッチを入れたのは、待ちつづけた主人の宇宙船《シュウォバン》が《マテリア》に到着したとき。降り立ったヒューマノイド――身長2.5メートル、白い肌、赤毛、六本指、黒い目――はシャバッザと名のった。〈1-コーラゴ〉は、蓄えた設計図にしたがいアンドロイド種族コーラゴの製造を開始。つづいて、ダ・グラウシュ銀河の惑星センチュリーIに移り、シャバッザの基地建設を指揮した。だが、やがて〈1-コーラゴ〉は、主人がまったく自分に信頼をよせていないことに気づく。
 主人は数百年に一度、センチュリーを留守にする。戻ってきた主人は、ヒューマノイド形態を基本としながらも、容貌はそのたびごとにまったく違っていた。シャバッザを名のり、服従を命じるコード送信機を持つことだけが、〈1-コーラゴ〉の主人であることの証。
 姿を変えるごとに、主人は〈1-コーラゴ〉を疎んじるようになっていった。一群のラムーニ鳥をしたがえた〈ディレクター10〉としてセンチュリーにもどったとき、シャバッザはついに〈1-コーラゴ〉に活動停止を命じた。
 思考をとざす直前まで、〈1-コーラゴ〉は自問しつづけた。何がいけなかったのか。主人を支える能力はあるはず――子孫であるコーラゴたちと比較しても、性能はけっして劣らない。あるいは、アンドロイドにあるまじきこの感情がうとまれたのか。ならば、この感情はなぜ組み込まれたのか。
 解答はみつからなかった。〈1-コーラゴ〉は、みずからのスイッチを切った……。


10 ダ・グラウシュ/《トレゴンVI》奪回!!

 センチュリー星系に突入した《グッド・ホープIII》は、〈ヴァーチャル投影装置〉で艦隊襲来を演出。時間をかせぎながら、無数のゾンデから〈ターミネート指令〉を発信する。
 コーラゴとコーラゴ技術を応用した機器すべてが即座に停止、または、本来の機能をわすれて暴走する。そこに、《グッド・ホープIII》はアルコン爆弾を投下。核火災のなか、惑星へ降下したローダンとTLDスペシャリストたちは、シャバッザの旗艦《ソル》をめざす。
 センチュリーIの防備を過信していたシャバッザは驚愕する。座乗する無敵のはずの《ソル》も、〈ソルブレイン〉をはじめとする多くの機器が機能を停止し、いまやスクラップ同然。
 当面の敗北を悟ったシャバッザは、《ソル》を放棄し、唯一コーラゴ技術を応用していない、かつての自分の船《シュウォバン》でセンチュリーIを離脱する。最後の〈ナノ・コロン〉に起死回生のプログラムを書きこんで。

「まちうけた2万2000隻の大艦隊と宇宙要塞118基は――?」
「戦わずして敗北……」
「ローダン、さすが卑劣さがちがう……」

 《ソル》を手中にしたしたローダンたちは、巨船の惨状に愕然とする。みずから点火したアルコン爆弾の核火災が《ソル》座礁地点に到達するまで16時間。無謀とも思える修理にテラナーたちはとりかかった。シャバッザが残した殺人アンドロイドがひとりまたひとりとテラナーを殺戮していくなか、〈セネカ〉と艦体を結ぶ迂回路を確保し、動力炉の破損に応急処置をほどこしていく。
 オクストーン人モンキーは、殺人アンドロイドを各個撃破していく途中、捨てられた〈ナノ・コロン〉の空の容器を発見する……。
 刻限が過ぎ、《ソル》が灼熱の炎に包まれても、人々は退去しようともせず、修復作業に没頭した。沸騰する大地に巨船が沈みこもうとしたとき、努力はむくわれた――《ソル》は浮上し、センチュリーI周回軌道へと上昇していく。
 惑星センチュリーIは核の業火につつまれて最期をむかえた。艦内では、新たに装備された未知の超光速駆動〈ハイパータクト〉を稼動させるための作業がつづく。
 意気あがる人々のなかで、ペリー・ローダン、レジナルド・ブル、モンキーの3人だけが、最後の〈ナノ・コロン〉の標的について暗い思いをはせていた。


エピローグ/破滅のカウントダウン

 《ソル》が到着したとき、惑星トリムは騒然としていた。
 発端は、テス・クミシャが偶然に感知したアイスマー・ステールメンゴルトの思考――近くトリティマー星系を〈ボイラー震〉が襲うおそれがある! だが、〈震動探究者〉は公式に宣言した――懸念された〈ボイラー震〉は近隣の無人星系に発生する、というのだ。
 人々は安堵のため息をつく。しかし、このことはまた、かれらの生きる銀河のかかえた危険をあらためて思いおこさせた。
 アラシャンで新たな志願者を追加乗員としてむかえた《ソル》は、ローダンの指揮下、フィー・ケリンドを艦長として、ゴルホーン銀河へむけて飛び立つ。〈第6使徒〉としての最初の使命を果たしたローダンは、ノンッゴ世界のピルツドームから、あらためてヘリオートスにコンタクトをとるつもりだった。

「ここで、ニュースです」
「ゴルホーン銀河のカルカッタからローダンに同行していたモンドラ・ダイアモンドさん――ローダンの子を身ごもったことを告白」
「生まれてくる子供の安全を考え、モンドラさんはアラシャン居残りを決意」
「アラシャンと《ソル》――どっちも危険なような……」
「ま、例の〈ナノ・コロン〉、標的はやはり〈セネカ〉らしいし。てことは……」
「まさか《ソル》はゴルホーン銀河へはたどりつけない?」
「運転手は〈セネカ〉……」
「だからね~」

 一方、ステールメンゴルトは、ベンジャメーンとテス・クミシャをともない〈ゾフェンゴルン〉に帰還。〈震動探究者ギルド〉に、最高指導者〈ディレクター10〉の正体をつきつける。混乱に乗じて権力を掌握しようとした〈ディレクター1〉ウヴィアルド・マラートを排したステールメンゴルトは、真に民主的な選挙で新たな〈最高ディレクター〉に選出された。
 ステールメンゴルトは、はじめて〈リング大計算機〉の心臓部に足を踏みいれる。より組織的な〈ボイラー震〉予報手段の確立とならんで、シャバッザが改竄したデータの解析と修復が目下の急務。だが、作業が進み真相が明かされたとき、戦慄がはしった。データは捏造されていただけではない。重大な事実が秘匿されていたのだ。
 〈ボイラー震〉の発生頻度は急速に高くなっていた。おそらく、1年以内に頂点に達するだろう――ダ・グラウシュ銀河全域を灰燼に帰す〈超ボイラー震〉として!!

「う、だからここも危険だってば」
「あとは、もうアラスカに賭けるしかない!」
「〈ヴァーチャル・シップ〉に乗って失踪したままのアラスカ・シェーデレーア」
「〈ヴァーチャル・シップ〉18隻の目標は――〈ボイラー〉?」
「銀河系、ダ・グラウシュ、チェアルス――各舞台で事態は急転直下」
「物語はクライマックスへ」
「さあ、年末はついに2000話刊行だ」


バーチャル・シップ/仮想流を翔けるものよ

 きみたちはわが愛し子。目をおとせば、誇らしさと、理解しえぬ情愛とを感ずる。
 わたしが見捨てたと信じているのか? きみたちの父は死んだと信ずるか? だが、それは真実ではない。
 訪れることがらは、きみたちには無意味に見えるだろうか? ――しかし、ある〈計画〉が存在することを心にとめおくがいい。
 未来に危険なしとはしない。きみたちの後の世代が、けっして生まれることのない蓋然性は、かつてないほど大きい。けれど、もし〈創設の年〉がすぎれば、なおかつ、そのとき、きみたちが生きてあるならば、何人もなしえなかったほど、わたしに近づくのだ。
 そのとき、きみたちの耳は〈鼓動〉を聞く。そのとき、〈始源の門〉のむこうに生命がある。そのとき、トレゴンは来たるのだ。
―― Perry Rhodan-Heft Nr.1945

……ダ・グラウシュとチェアルスの決着――そして、事態は《マテリア》との決戦へ


Thoregon comes true / トレゴンは来る
――from Private Cosmos 21
1999/6/15 r.psytoh with y.wakabayashi
produced by rlmdi.