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| ペリー・ローダン |

DIE GROSSE LEERE / ヴォイド

1995/5/6 r.psytoh / 西塔玲二
- 監修 / y.wakabayashi

PERRY RHODAN Nr.1650 - 1699
NGZ1216年 / 銀河系、そして、かみのけ座方向のヴォイドで


プロローグ

 新銀河暦1216年10月31日が人類史に新紀元を導くことになるのか、この時点では誰ひとり知らない。ヴォイドの外縁部にあったギャラクティカーたちも、そんなことには関心がなかった。紀元の創始と終焉をしるすものは、後世の決めるべきことだ。
 はるか以前に、かれらはいわゆる宇宙最大の謎を解くために旅立った。それをどう理解すればよいのか知りもせず、そしてまた、死の危険へととびこむことを知らぬままに。答えが近いと感ずるものはいなかった。濁った大海を往くかれらの目はふたがれており、水底の真珠の園を見ることはかなわない。
 だが、200万年の歳月の後に、それを可能とする要因がはじめてそろったのだ。それはヴォイド前面の脈動星ボルギアから暗黒惑星カロンへの飛行ではじまった。時に9月16日のことである。

――ローダン・ヘフト 1700


1. ヴォイド / 謎が謎を呼ぶ第一次遠征

 ボルギア周辺の銀河の調査から、すでにこの宙域が謎をかかえていることが判明する。ヴォイドを包むあまたの銀河は、200万年前、何者かの侵略を受け、大同団結してかろうじて危機を退けた過去を共有していた。その危機がどのようなものであったのかは、時の流れに風化して明らかでなかった。
 しかし、千の銀河の同盟タンクストゥーンラの象徴たる《クヴィドルの紋章》……横たわる8、すなわち「∞」……が、いまなお無数の種族の間で畏敬の対象であることが、その「名づけられざる悪」との闘いの凄まじさを物語っていた。
 そして……エノクスの「宇宙最大の謎」の焦点たる21の惑星〈サンプラー〉は、すべて200万年前の激戦地。そこでは、物理法則をくつがえす事象がギャラクティカーたちを待ち受けていた。
 惑星質量を無視した大重力の世界ノマン。その直径より深い竪穴のうがたれた惑星シャフト。夜のない世界トルニスター……。これら超物理の世界は、決して友好的ではなかった。シャフトの坑穴に潜った科学者たちは跡形もなく姿を消した。そして、ノマンの「重力キューブ」で消息を絶ったエルトルス人のコマンドは、なんと局部銀河群に出現する。
 ネガティヴ・ストレンジネスを帯びたバーサーカーと化したエルトルス人の暴走から、判明したことはただひとつ。ヴォイドの謎とからんだ「扉」のひとつが、局部銀河群に存在するらしい。それも、太陽系第四惑星・火星に……!
 一方、サンプラーを探査するローダンたち遠征隊は、タンクストゥーンラの後継組織である「タブー警察」ダムリアルと心ならずも衝突する事態に陥っていた。21のサンプラーを、200万年前の法にしたがい禁断惑星と考えるダムリアルは、ギャラクティカーたちに一方的に終身刑を宣告する。
 〈鏡の生まれ〉たるミュータント、ヴァンデマー姉妹が、コスモクラート・タウレクの残したサイバークローンのヴォルタゴの助けを得て、サンプラーの超物理空間への突入に成功したのは、まさにそんな瞬間だった。「鏡の世界」をただひとり視認できるミラ・ヴァンデマーと、唯一行動の自由をたもてるヴォルタゴ。この奇妙な共同体は、鏡の世界を介して連鎖した21の禁断惑星から、ネガティヴ・ストレンジネスを持つクリスタル……〈スピンデル〉を回収する。
 エイティーンと名づけられたサンプラー惑星をのぞき、発見されたスピンデルは20個。デッドゾーン下のアルコンで確認されたピラミッドプリズムと重量以外はうりふたつ。いや、21の切子面のひとつが欠けている。
 スピンデルから抽出されたデータは、ヴォイドの「中」を指している。ダムリアルと一時的に休戦をむすび、星なき空間へと突入するローダン。かれらの前に、太陽をもたない孤独な惑星が浮かび上がる……。
 カロンと命名された暗黒惑星で発見されたのは、21番目のスピンデル? 答えはノー。それは20個のセグメント。スピンデルの欠けた部分を補うパーツ。では、21番目のスピンデルはどこに?
 そのとき、ひとりの超戦士が一行の前に出現する! 彼女の名はモイラ。200万年を生き抜いたというモイラは、あのタンクストゥーンラと侵略者の戦いの目撃者。それどころか、侵略者を撃退した深淵の騎士クヴィドルに、オービターとして仕えたという。
 しかし、モイラは真相を語ろうとしない。ローダンを新たな主人と考える超戦士だが、その奇妙な倫理観を危険とみたテラナーは申し出を拒否する。ヴォイドの秘密を解き明かす千載一遇のチャンスは失われたかに見えた……。

―― 1650-1675


2. スピンデル / 200万年のプラン

 ヴォイドに眠る秘密を求め、勇躍出発した大遠征。しかし、あまたの時間と労力をかけて得られたものはただ、20組のスピンデルとセグメント。銀河系にもどったローダンたちは、その分析に全力を傾ける。そして、複数のスピンデルを破壊した後に、ようやく判明する事実……。スピンデルとセグメントは、周囲の遺伝子情報を吸収して、生命を生み出すのだ!
 スピンデル生命体。かれらは、200万年の歳月を超えた使命を果たすために存在する。だが、その使命とは何なのか、かれら自身、まだ知らない。その集合体に、1体が加わるごとに明らかになっていくプログラム。かれらには、すべてのスピンデル生命体が必要なのだ。
 おのが存在理由、創造プログラムを知るために、スピンデル生命体は独自の行動を開始する。タイタンの研究センターから、脱走した7人のスピンデル生命体は、強奪したスピンデルから新たな同胞を創造。かれら自身とヴォイドにかかわる情報を求めて、銀河系を蹂躪する。
 創造に際して雛形となったテラナーそっくりの外観を有しながら、ひとりひとりがハルト人をも凌駕する戦闘マシーンである14のバーサーカーの前に、銀河は震撼する。フェルト星系ガタスはわずか数十秒でスピンデル生命体の手に落ちた。戦士種族の母星エルトルスも、ギャラクティカムの評議場ヒューマニドロームでさえ、かれらを阻止するすべをもたなかった。
 そして……求める回答がテラにあることを知った14人は、太陽系に襲来。ルナのネーサンを制御下に置き、再度のヴォイド遠征を要求する。死の衛星を再建造してソルをノヴァ化するというかれらの脅迫に、ローダンたちも打つ手がないと観念しかけたとき……彼女が出現する。
 モイラが。まるでこの機会を待ち受けていたかのように、超戦士はルナに潜入。スピンデル生命体を各個撃破、虜にする。だが、事態はローダンの目算どおりには進行しなかった。スピンデル生命体と、そしてヴァンデマー姉妹とアラスカ・シェーデレーアを乗せたまま、《スティクス》が超光速飛行を開始したのだ……ヴォイドをめざして!
 スピンデル生命体による危機は、ひとまず去った。しかしローダンは、再びヴォイド遠征を組織することを迫られる。14人による嵐の吹き荒れた火星で、クヴィドルの紋章の刻まれたオベリスクが発見されたのだ。新たな謎……ヴォイドと太陽系をつなぐ謎を解明するため、そして誘拐された友を解放するため、テラナーはいま一度ヴォイドを訪れねばならない。
 ヴォイドに眠る「宇宙最大の謎」……。
 スピンデル生命体の使命とは何か? 超戦士モイラは何をたくらむ!?
 いま、すべての「鍵」がそろい、「扉」が開かれる……!!

――1675-1700


解説 : ヴォイド / Die Große Leere

 エノクスの語る「宇宙最大の謎」の舞台となるのが、人類の銀河系から見て、かみのけ座方向に位置するこの「星の大空隙」である。さしわたし1億光年を超えるこの虚無には、エノクスの〈近道〉を経由して立ち入ることが不可能。大宇宙の地図作成者を自任するエノクスにとっては、究極の障害である。
 もちろん、テラナーをはじめとするギャラクティカーたちには、なんら関係のないことではある。しかし、「究極の第三の謎」=〈法の創造者〉と関わりがあると聞いては、黙って見過ごすことができないのも、また、ローダンたち永遠なる退屈の虜囚の悪癖でもあるのだ。
 銀河系を出発した《バジス》は、後々宇宙ハンザ同盟の商業拠点となるコマ・ステーションを中間基地として建設しながら、3年半の歳月をかけて2億2500万光年を飛行する。当面の目標は、エノクスとの会合点であるヴォイド前面のパルサー、ボルギアである。
 大空隙を超えたさらに彼方には、宇宙の大規模構造のもうひとつの焦点、グレート・ウォールがあり、そこにはコスモヌクレオチドのひとつ、あのフロストルービンのあるかみのけ座銀河団も含まれている。

解説 : ダムリアル / die Damurial

 200万年前に、未知の侵略に対抗して創設された「千の銀河の同盟」タンクストゥーンラ(die Tanxtuunra)を継承する銀河連合。とはいえ、歳月の果てに影響範囲は縮小して、ヴォイド周辺宙域のごく一部を支配しているにすぎない。
 その統治形態はしごく緩やかなものである。ただひとつのルールさえ守ればよいのだ。「禁断の惑星に立ち入らない」という、200万年前に定められたルールを……。これは、かれらの別称「タブー警察」にも象徴される。
 存在する機関も、ギシュ=ヴァタクの艦隊と、テアンの法廷のふたつのみ。しかし、禁忌に対する執行に際しては仮借を知らない。クヴィドルの定めたタブーを侵したものには、一切の弁護の余地はないのだ。
 身長1メートル前後のヴァタクはテラのカワウソに似ている。かれらがギシュ=ヴァタクの、いわば頭脳。その鳴らす太鼓の音色にしたがって、体長2メートルのトカゲ型半知性体ギシュが行動する。非常時には、シンセサイザー音でも指令可能。
 かれらの艦船は「杓子船」と呼ばれる。オタマジャクシに酷似した形である。1隻あたり1~2体のヴァタクが管理。数十隻がオタマジャクシの尻尾にあたる部分で連結した、タンポポの綿帽子のような集合体で超光速移動、戦場に出現すると同時に爆発的に分裂、艦隊行動に入るという奇襲戦法を多用する。

解説 : モイラ / Moira

 ボルギアからヴォイド内へと1000万光年余り進入したところにある孤独な暗黒惑星カロンで数百年にわたり休眠状態にあった超戦士。
 200万年前のヴォイド大戦に参加し、死に瀕したところを深淵の騎士クヴィドルに救われてオービターになったという。しかし、その後なんらかの理由から騎士と袂をわかち、傭兵のようなことをして暮らしてきたらしい。
 一時は自身、騎士たらんとしてクラトに潜入するが正体を看破され失敗。コスモクラートによって50万年にわたり次元牢獄に幽閉された経験から、宇宙の秩序勢力を憎悪しているが、いまなお「深淵の騎士」という言葉には夢をもっているあたり、人柄がうかがえる。
 その彼女をして「クヴィドルは詐欺師! 自然のプロセスを、おのが手柄とした、騎士の栄光に値しない人物」と語らせる裏に、どんな事情があったものか。もっともモイラ自身の正体にしても、すこぶるつきで怪しい。そもそも、その相対的不死性はどこから得たものなのか。
 エイ型宇宙船《スティクス》を駆り、気のむくままに宇宙を放浪するこの女戦士は、事実上無敵。5万年前のテラ(レムール)でハルト人100人を手玉にとったとか、太陽系に第二次攻撃を準備していた時間警察のドラン艦隊を《スティクス》1隻で壊滅させたとか、逸話にことかかない。
 ローダンの拒否も、モイラにはさほど痛手ではないらしい。そう、彼女はまもなく自分の必要となる時が到来することを予測しているかのようだ……。


DIE GROSSE LEERE / ヴォイド
1995/5/6 r.psytoh with y.wakabayashi
produced by rlmdi.