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| ペリー・ローダン |

氷惑星 ―草案―

眞願 干支淋

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著者 眞願 干支淋
2006年9月9日 最初の刊行
2007年8月8日 製本して刊行


 本作は漸く物語の体裁をとった草稿に、ただ雰囲気から謡の記号の様な物を付記した戯物である。韻も字数も未熟の故、流石に不遜な作者も節博士までは記せずにサシ上歌と云った辺で諦めている。素人仕事の数箇月ではこの程度が限度であろう。伝統芸能を嘗めてはいけない。


『氷惑星』の思い出

 Perry Rhodan-Heft というか早川版「宇宙英雄ローダン・シリーズ」の初期の巻というのは作者たちの熱意や意気込みが伝わってくるような話がやはりそれなりに多かった。何度も読み返したということもあって、いずれの巻も深く印象に残っている。だが、そうした中でも「燃える氷惑星」(早川版の17巻『燃える氷惑星』前半)はどうしたことか何度も良く思い返して読み返した。そうした意味では一番好きなエビソードということになる。
 物語の筋はこうである……
 スプリンガーとも呼ばれる銀河商人の一族が、自分たちに一言の断りもなしにこのところ星間通商を始めたテラナーという田舎の惑星の住民がいるので、ここはひとつシメてやらねばなるまい、とテラナーを虐めにかかる。そうした中で、ジュリアン・ティフラーを含むテラナーの士官候補生数名を捕らえるのだが、この連中は銀河商人のもとから脱出し、星系ベータ=アルビレオの惑星スノウマンに逃げこんでしまった。スノウマンは氷雪に閉ざされた惑星で、ここをちょこまかと逃げ回られたのではさすがに捕らえるのは厄介だ。かといってこのまま逃がしては沽券に関わる。そこで、銀河商人はアルコン爆弾というのを投下して惑星スノウマンを丸ごと焼くことにした。自分たちの体面を保つためには無人の氷の惑星ひとつくらい焼いてもどうということはない、という考え方である。
 ところが、スノウマンは扁平な軌道を描く惑星だった。長い時が経てば氷が弛み春を迎える生命に溢れた惑星だった。じつは知性ある住民も暮らしていた。ただ、かれらは長い冬を越えるために洞窟にこもり遠い春を心待ちにしてまどろんでいたから、知られることがなかったのである。
 ここに、テラナーでも、スプリンガーでも、惑星スノウマンの住民でもない第四の種族が登場する。テラナーを友と認めて協力するネズミビーバー種族のグッキーである。見た目は獣ながら知性を有し、テレパシー、テレキネシス、テレポートの3つの超能力を有するグッキーは、惑星スノウマンにいるテラナーを助けようと地表に降り立つ。だが、やがて惑星は燃えはじめる。一度燃えはじめたら止める手立てはない。グッキーは爆弾を投下した銀河商人に怒りをぶつけ、その船を飛べなくしてしまう。こうして、惑星は燃えて失われ、爆弾を投下した者も炎に呑まれる。グッキーとテラナーと、かれらがコンテナに収めた惑星スノウマンの住民のほんのいくらかだけが脱出を果たす。
 ……さて、これはいったい何と受け止めれば良い話だろうか?
 若いテラナーたちとグッキーが活躍する逸話である。往時の銀河商人スプリンガーの傲慢と不遜とがうかがわれる逸話である。格別に壮大な話でも、ドラマティックな話でもない。だが、最初に読んだ時からどうしたものか心のどこかに引っ掛かるのである。何かがわからないのである。
 そうして思ううちに、ひとつ気づいたことがあった。早川版の15巻『宇宙商人スプリンガー』の後半は表題を「パルチザン、ティフラー」という。惑星スノウマンに逃げこんだ若いテラナーを非正規の遊撃軍になぞらえているのである。そこで、あらためて思い返すと物語はまた別様に見えてきた。「燃える氷惑星」というのはじつは【パルチザンが逃げこんだ冬の北国の村が大量殺戮兵器で焼き払われる物語】なのではないか。【大量殺戮兵器を投入した指揮官が、自分も同じ劫火で焼かれる物語】なのではないか……なにやら随分と生々しい現実であるかのように思えてきた。そうしてその上で「燃える氷惑星」はこれまた何とも言い難い何かを読者に突きつけている気がしてきた。すなわち、大量殺戮兵器で村を焼いた指揮官を断罪し極刑を下すのは、人でも法でも神でもない。ただ一匹の獣なのである。
 繰り返すが、これはいったい何と受け止めれば良い話だろうか?
 作者のクラーク・ダールトンは第二次世界大戦で戦場におもむいた世代に属し、東西冷戦の時代、ベルリンに壁を建てた年にK・H・シェールとともに Perry Rhodan をはじめた人である。そうしたダールトンが何を思って「燃える氷惑星」を書いたのだろうか?
 今あらためて思い返して整理してみると「燃える氷惑星」についてはどうやらそうした疑問がずっと心に引っ掛かっていて、だからこそ幾度も思い返し読み返したのではないかと思う。
 ところが、こうした真摯な問い掛けを長く繰り返していたはずなのに、考えこむうちについつい本作に材を取った謡本もどきを思いつきで書いたりしているわけで、つくづく自分は罪深い……というかファンというのはつくづく悲しい生き物だなあ(苦笑)と思ったりもする。


内容 表題の作品1作
単行本 和本 7丁
サイズ A5

PDF:氷惑星 ―草案― 初版 2006年9月9日 740KB

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 和綴本を試作してみたところ、1日かけて5冊しか作れない……。

 その後、けっきょくプロに頼んで製作することにしました。


2006/9/9 最初に製作した頃の記事
2007/8/8 プロに頼んで幾らか部数を揃えて製作した頃
発行人: y.wakabayashi
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