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| ペリー・ローダン |

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Perry Rhodan-Heft Nr. 2700 技術の網が覆う月テクノ・ムーン

Perry Rhodan-Heft Nr. 2700 ストーリー・ダイジェスト
2013 y.wakabayashi
- 監修 / r.psytoh / 西塔玲二


 新銀河暦1514年6月15日……。
 ペリー・ローダンは、自由テラナー連盟の特別非常勤職員にして、ポリポート駅網の管理役。この日、訪れたのはテラニア・スペースポートだった。
封鎖されたドームの中は、傍目には何のコトやらわからない打ち上げ準備に、忙殺されていた。
 表向きは、ワリンジャー・アカデミーの一プロジェクトだ。
 自由テラナー連盟の首長、政庁首席アルン・ジョシャナンも、仔細は知らない。ギャラクティカム議長、アルコン皇帝ボスティク1世は、何ひとつ知らない。
 ドームのパラトロンバリアの中では、ローダンの右腕と自認する金星人バジル・ナンが、とっくに決まっている最終結果をもう一度コントロールするという目的に集中していた。
 最終調整中の《スターダイヴァー》は、直径200mのミネルヴァ級巡洋艦をベースに、新開発の超空間移行促進機ハイパートランスプログレッサーを載せた特殊船。両極に長さ50mの紡錘状の突起が出ている。
 そう、歴史は繰り返す。
 ペリー・ローダンは、あの月に立つ最初のひとりになるのだ。


 新銀河暦1470年1月17日、星系ソルは〈異常空間アノマリ〉を出発。銀河系の本来の座標に、瞬時に帰還した……つもりだった。
 だが、到着したのは、銀河系の暦で1503年8月26日。星系ソルが帰還を始めて、33年が経っていた。その上、月が足りない。衛星ルナの計算脳ネーサンと工業施設を失い、とりわけ惑星テラは困窮する。

 34年前、星系ソルと共に惑星テラが消え失せた時、自由テラナー連盟を構成するテラナー植民惑星4047と、他6000を超える惑星は、プレアデス星団の星系ヨグル第7惑星マハラニで協議。プレアデス同盟の執政官、アルン・ジョシャナンを暫定・第一テラナーに選び、惑星マハラニを首星に定めた。
 34年後、帰還した星系ソルは、あらためて一星系として連盟に参加することになった。
惑星テラの象徴〈太陽系政庁〉も、マハラニに移動した。首都テラニアの広大な外交官居住地区に住む者もなくなった。
 ペリー・ローダンは、空き家になった一大使館に居を構えた。

 新銀河暦1512年5月22日、月が現れた。
 だが、惑星テラの衛星は、さまがわりしていた。
 まず、月面を、機械、装甲、各種の技術構造物が網状に覆っていた。テラの人は、これを技術の殻テクノ・クラスト、または、技術の網テクノ・メッシュと呼んだ。
 加えて、月の上空1万2000メートルに、緑がかった未知の力場があった。物理的に通過を阻むだけでなく、心理的な嫌悪感を与えるこの壁は、反発の壁リパルサー・ウォールと呼ばれた。
 不気味な月を忌み、2年の間に10億人がテラを去った。その同じ月に、研究者や、旅行会社らが群がった。
 ソル政府は、ジュピター級ウルトラ戦艦《エラス・コロム=カン》を旗艦とする1千隻で衛星ルナを封鎖。3万キロの距離を置いて監視させた。


 新銀河暦1514年6月15日……。
 ローダンは、テラニア・スペースポートに続いて《エラス・コロム=カン》を訪ねた。
 月から、何者かが周辺を走査したふしがあるという。
 翌16日、ローダンは、ソル政府官邸ソラーハウスに、シク・ドルクスタイゲルを訪ねた。このアトル人女性は、今は自由テラナー連盟の首席科学者だ。
 《スターダイヴァー》の超空間移行促進機ハイパートランスプログレッサーは、もとは銀河間航行船用に開発したものだ。
 稀少なハイパー水晶、サルクリットを大量に消費するが、助走なしに船体を超空間に移行できる。超空間を亜光速で推進できるから、月近くで超空間に入り、リパルサー・ウォールの下で通常空間に復帰するのも可能な理屈だ。
 問題は、稼働時に出す放射が致命的なことだ。超空間に入る際、生身の乗員を一時的に非物質化しておく必要がある。
 乗員の大半はロボットでまかなえる。だが、肝心の操船はロボット任せというわけにいかない。文字通り一体となって船を操る技術と経験が要る。
 そこに、ペリー・ローダンが志願した。自分なら《ミクル=ジョン》を精神の力で操った実績があるというのだ。
 最終的に、乗組員はローダンを含む4名に決まった。
 トウフェクはナノ工作員〈パズズ〉を操る。シャンダ・シャーモットは超能力者。ハイパー物理学者フィオン・ケメニーは、超空間移行促進機ハイパートランスプログレッサーの開発者で、この計画の責任者だ。
 発進は、6月19日……かつてローダンが最初に月に飛び立ったのと同じ日に決まった。


 17日、ローダンは、大富豪ヴィコル・ブガシドウの招きに応じ、スペースジェットで火星軌道に向かった。
 ランデヴーしたのは、大富豪の〝個人ヨット〟《クルーゼンシュテルン》。
一辺2.5kmの箱型をしたポスビ船で、平坦な表面に中世の城か聖ワシリー大聖堂を思わせる構造物が突き出てみえる。

 数週前、ペリー・ローダンは、TLD長官アッティラ・レッコルから気になる報告を受けていた。
《クルーゼンシュテルン》で操縦士を務めるテフローダー、ファリエ・セフェロアは、じつはローダンの血縁者……孫娘であるというのだ。
 ローダンは、息子たちの顔を思い浮かべた。

 大富豪ヴィコル・ブガシドウは、自分の研究が学会に認められぬ窮状を語った。
 遠い昔、ソル系を離れたメデューサという惑星がある。
 かれは、木星の衛星エウロパの私有地で、1800万年から2100万年前の遺跡を発掘。異文明の技術が残る洞窟に、惑星メデューサの手掛かりを見つけたのだ。
 恒星を離れた惑星を追跡するには、大型ポジトロニクスを使った複雑な軌道計算が必要だ。だが、学会で異端視されるヴィコルは、演算時間の割り当てを得る術がない。
 それゆえ、ローダンの口添えで、生体ポジトロニクス〈アザーワイズ〉の演算時間を融通してもらえないか、という。
 かつて木星の衛星軌道にあった〈アザーワイズ〉は、今はテラニアのソラーハウスに移設されていた。機能拡張の上、月の計算脳ネーサンに代わりソル系の各種制御の根幹を担っている。太陽系政庁と共に計算脳ラオツェがマハラニに移転した今、道楽に割く余裕のある施設ではない。
 ローダンは言葉を選び、富豪の望みを退けた。
それでもヴィコルは食い下がり、ローダンと再会の時の符丁を申し合わせた。
 《クルーゼンシュテルン》は、この先、エウロパに立ち寄り、大富豪の故郷……ターラニス系、惑星イアペトゥスの衛星レアに帰還する予定という。
 この訪問で、ローダンが、孫娘……と目される操縦士と言葉を交わす機会はなかった。


 翌18日、ローダンはソラーハウスで、ソル系首相カイ・チャンから、イーストサイドでブルー人とテフローダーの武力衝突が起きたと聞かされる。
 きっかけは、ポリポート駅《イタフォル=5》だ。
 銀河間を分から時間の単位で結ぶ超技術の交通システムは、他の宙域でも利権争いや紛争の火種となっている。
 アンドロメダ銀河でも、先だってポリポート駅がらみの問題が持ち上がり、レジナルド・ブルが《ジュール・ヴェルヌ》で対処に出向いたばかりだった。
 カイ・チャンの話によれば、今回のイーストサイドの武力衝突には、ギャラクティカムの要請にもとづき、ソル系も人道支援部隊を送る。ポリポート駅網の管理役であるローダンも現地に向かって欲しいという。
 ローダンは、月の仕事を片付けたら、ポリポート駅網経由で現地に向かい、先行する部隊と合流しよう、と約束する。

 ソラーハウスを出て、ローダンは、スタータック・シュレーダー医院にグッキーを見舞った。
 2年前、月が帰還した時、ネズミビーバーのグッキーは、月面に向けテレポートを試みた。
 その時、リパルサー・ウォールに触れ、いうなれば超心理的な火傷を負ったのだ。以来、ずっとこうして昏睡状態にある。


 ブルー人とテフローダーの戦闘が始まった星系ガタミュズは、恒星ソルから距離5万9475光年。銀河系の反対側、イーストサイドにある。

 5万年前、惑星レムール……今のテラに発したレムール人は、銀河系全域に星間帝国タマニウムを築いた。各星域の恒星転送機は、その遺産として知られる。
 タマニウムが滅亡し、レムール人の一部がアンドロメダ銀河に逃れた後、イーストサイドに広がったのが、ブルー人だ。
 西暦2406年、アンドロメダ銀河の〈島の王〉とテフローダーの体制が崩壊すると、テフローダー難民が銀河系に渡り、ノースサイドに住みついた。この子孫が、今は新タマニウムを称している。

 一方、ポリポート駅は、1000万年前、アンスリアン人が建設した銀河間転送網のステーションだ。ヴァトロクスの周波王国と、半空間シュプール・チェンジャーの手を経て、今の銀河系ではギャラクティカムが管轄する。
 移動手段としても、文化・技術資産としても、かけがえない施設だ。
 ポリポート駅《イタフォル=5》は、長くサウスサイドの恒星転送機ナベグ五角形の近くにあった。13年前、転送の遅延が目につくようになり、恒星転送機の干渉が疑われた。そうして、ギャラクティカムはこの施設を星系ガタミュズに移設した。
 だが、星系ガタミュズはブルー人の版図にある。ブルー人は、テフローダーが《イタフォル=5》に近づくのを許さず、4年前、最初の武力衝突が起きた。
 以来、《イタフォル=5》には、ギャラクティカムの派遣部隊が駐留している。

 新銀河暦1514年6月、テフローダー監視船が星系ガタミュズに接近。不幸な出来事が重なり、ブルー人とテフローダーの大規模な武力衝突に発展した。
 ギャラクティカム派遣部隊の旗艦《ガルブレイス・デイトンV》では、司令官アンナ・パトマンが、できすぎた事態の推移に何者かの意図を嗅ぎ取る。だが、今は、まだ漠たる予感でしかない。
 そうするうちに、新タマニウムの首長の旗艦が現れた。ヴェトリス=モラウドの《ヴォーラタ》だ。

 この後……。
 ギャラクティカムは、ソル系に人道支援を要請。ソル系は《ジョヴァンニ・カボート》を旗艦とする70余隻の派遣を決めた。


 6月19日、《スターダイヴァー》はテラニア・スペースポートを発進し、月へ向かった。
 リパルサー・ウォールの5万5000km手前……ペリー・ローダンは超空間移行促進機ハイパートランスプログレッサーのスイッチを入れる。船体の両極の紡錘が転移泡を生成し、船は超空間に移行した。
 同じ時……。
 月面で技術の殻テクノ・クラストが開いた。見慣れない球形艦32隻が上昇を始めた……。

 《スターダイヴァー》は、リパルサー・ウォールの内側に実体化した。
 月面に出現した一群の球形艦は、2隻が《スターダイヴァー》を砲撃。30隻がリパルサー・ウォールを抜け、宇宙に出た。
「我が名は、シェクヴァル・ゲネリク。宇宙父艦《ホートリ》の艦長にして、オンリョン艦群の司令官である」と、漆黒の肌と金色の眼をしたヒューマノイドが言う。「アトピック法廷の名のもとに告げる……」
 ゲネリクは、星系ガタミュズに向かう部隊に停船を命じた。
 人道支援部隊の旗艦《ジョヴァンニ・カボート》は、突然出現した異人の一方的な主張を黙殺。僚船と共にリニア空間に入った。
 これに対し、オンリョン艦群30隻は宇宙魚雷300基を射出。ソル系艦隊は迎撃するが、96基を取り逃がした。
 超空間に消えた魚雷群は、リニア航行中の70余隻に追いつき、全船を沈めた。
 オンリョン艦群30隻は、無傷でリパルサー・ウォールの中に撤退した。


 シェクヴァル・ゲネリクは、星系ソルにおいて超光速航行を禁じる声明を出した。
「本日は銀河系におけるアトピック法廷の最初の年、最初の日である」
 その上で、ペリー・ローダンと、アルコン帝国皇帝ボスティク1世の引き渡しを求めた。
 被告ペリー・ローダンの罪状は3つ……ドリフェル・ショックを引き起こしたこと。セト=アポフィス、コルトロクら、超知性体を手に掛けたこと。ならびに、GAヨマードの〈世界を滅す劫火エクピュロシス〉を起こすこと。
「ペリー・ローダンは、8万4387年の正義の第八循環において〈世界を滅す劫火エクピュロシス〉を引き起こすことになるのだ」

ENDE

新銀河暦1514年 Perry Rhodan-Heft 2700


Perry Rhodan-Heft Nr. 2700 テクノ・ムーン
Der Techno-Mond von Andreas Eschbach より
2013/7/21 y.wakabayashi
produced by rlmdi.