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| ペリー・ローダン |

Perry Rhodan-Heft Nr. 2600 タナトス=プログラム

Perry Rhodan-Heft Nr. 2600 ストーリー・ダイジェスト
2011 y.wakabayashi
- 監修 / r.psytoh / 西塔玲二


 その後――超知性体〈それ〉の人工惑星ワンダラーと、惑星グリームから造られた超知性体〈タリン〉の人工惑星ペレグリヌスは、姿を見せなかった。
 タラニス島上空の〈八天宮〉は、まだ機能している。惑星テラ、惑星マルカヌ、星系スターダストの4惑星の〈六天〉は通行可能だ。だが、人工惑星ワンダラー、人工惑星ペレグリヌスの〈二天〉にはつながらない。
 アンドロメダ銀河では、ギャラクティカム同様の種族同盟を創設する動きがある。懸案だった影マークス問題は、影マークスがアンドロメダ銀河を離れ、ポリポート駅網の管理人だった〈半空間シュプール・チェンジャー〉種族の後任となって、一応の解決をみた。
 テラナーは、ポリポート駅網を通じて、銀河系+アンスレスタ銀河を含む12銀河を往来した。
 アンスレスタ銀河は、6億6300万光年の彼方、シャプレー超銀河団の中にあることが判明した。
 ザガダン銀河――アンスレスタ銀河から2300万光年――と、アルカガル銀河――アンスレスタ銀河から3700万光年――のポリポート駅は、当初から接続できなかったが……新銀河暦1463年の秋以降、制御装置にも表示が出なくなった。
 新銀河暦1466年から、銀河系においてハイパー嵐が激化した。
 ジュリアン・ティフラーは、銀河系に帰郷してから、引き籠もることが増えた。本人によれば「惑星オアゴニルを訪問し、〈アルケティム至聖所〉の螺旋渦巻を昇って、〈アルケティムの精髄〉を発見した」という。

 新銀河暦1463年7月1日、自由テラナー連盟で、第一テラナー、ヘンリケ・ユバリが再選された。ペリー・ローダンは政庁首席・就任を辞退し、レジナルド・ブルが政庁首席となった。その後、ペリー・ローダンは、ヘンリケ・ユバリの後押しで〈ポリポート駅群専任ギャラクティカム特使〉に就任した。なお、アトランは〈恒星転送機専任ギャラクティカム特使〉となった。
 新銀河暦1468年の選挙で、ヘンリケ・ユバリは、第一テラナーに再選された。レジナルド・ブルは政庁首席に再任された。


 新銀河暦1469年9月5日、自由テラナー連盟の惑星テラ、首都テラニアの上空に浮遊する太陽系政庁で、ペリー・ローダンは記者会見した。
「長らく賭博場として使われていた《バジス》を、経営者から買い戻し、商船に改装したのだ」
 《バジス》は、艫にLFT-BOX――2km角のサイコロ型――を装着し、最新型の亜光速・超光速エンジンを搭載することになった。新装《バジス》の船長は、エリク・テオンタ。

 現在、《バジス》は、恒星ハロの第3惑星オーロラの軌道上にある。
 オーロラは、そもそもギャラクティカム議会場がある惑星。現在は、超知性体〈それ〉から貸与された商星《ジェルガル》が、惑星を周回している。
「明日、新装《バジス》は、初の遠距離航行に発進するのだ」
 《バジス》は老朽船だが、遠距離航行については商星の転移機能任せだから問題ない。
 今、重要なのは全長14km……現在は16kmの《バジス》の巨体だ。これは、商船として他に類がない。
 《バジス》は、通商と親睦の任を担い、銀河系の商星《ジェルガル》からアンスレスタ銀河に旅立つのだ……。

 記者会見の途中……。
 突如、太陽系政庁がシステムダウンした。さいわい、システムは即時に回復し、太陽系政庁は数メートル降下した程度で済んだ。
 だが、この不測の事態に、政府は太陽系政庁にいた民間人を避難させると、太陽系政庁を下の政庁湖に着水させた。
 同じ頃、惑星テラの随所で、同様のシステムダウンが発生。
 この現象は〈重力断裂〉と呼ばれた。

 政庁首席レジナルド・ブルは、ギャラクティカム特使ペリー・ローダンと意見交換した。
「少し前……通称アウグル人とかいう得体の知れない異星人が、テラに出現したですぜ」
 両名がアウグル人と異常現象の関係を論議していると、TLD長官アッティラ・レッコールが来て、ペリー・ローダンに至急の伝言があると告げる。


 出航目前の《バジス》で、不審死が相次いでいる。
 そして、事件に際して、毎回、謎の紫色の輝きが記録されているという。
 犠牲者は誰も、死の間際、ペリー・ローダンに《バジス》へ来るよう求めていた。殊に、犠牲者のひとりは「ペリー・ローダンの息子が待っている」という言葉を遺していた。

 ペリー・ローダンは、急遽、グッキーを連れ、《ミクル=ジョン》――ポリポート駅網を通行可能な宇宙船――で、発進する。
 しかし、折から発生した宇宙震のため、《ミクル=ジョン》は、1度、ポリポート駅の搬送筒・通過に失敗……ようやく2度目に成功し、一行は《バジス》に到着した。

 《バジス》で――。
 連続不審死を調査するハイパー物理学者ネモ・パルティジャンは「紫色の輝きにストレンジネス効果が一役買っている可能性がある」と示唆した。モンドラ・ダイアモンドは「異宇宙が通常宇宙に定着しようとしているみたい」と評した。


 新銀河暦1469年9月6日、テラニア標準時間18時31分、星系ソルと他星系をつなぐ転送機通路が、すべて途切れた。
 超巨大な宇宙震が、計測された。
 突然、直径1光年のほのかに紫色に光るエネルギー泡が星系ソルを包み……星系ソルは消えた。

 《バジス》司令室に、紫色のヴェールが発生し、1体のヒューマノイド知性体……エンネルハールがあらわれた。
 エンネルハールは身長2メートル、漆黒の肌をもつ筋肉質の巨漢。緑がかったブルーの服は密着度が高い。完璧なプロポーション、肩まで届く黒髪……ペリー・ローダンは〈力強き者〉を想起した。
 エンネルハールは警告した。
「ドサンティが《バジス》を拿捕しようとしているっ」
 エンネルハールは、ドサンティが待ち伏せる座標に《バジス》が出現しないよう、転送先を設定変更した。
 だが……。
 突然、素性の知れないシールド場が《バジス》を包み……《バジス》は惑星オーロラの軌道から消えた。
 《バジス》は、長い距離を転送されていく……。
 エンネルハールは言う。
「ドサンティは、ポリポート駅網や商星に細工することができるのだっ」


 エンネルハールの指摘にもとづき、ペリー・ローダンは、《バジス》船内に〈隠し部屋〉を発見。エンネルハール、ハイパー物理学者ネモ・パルティジャン、モンドラ・ダイアモンドと共に、〈隠し部屋〉に足を踏み入れた。
 〈隠し部屋〉には、白髪の老人がいた……ローダンは超知性体〈それ〉を想起する。だが、素性はすぐ知れた。
 ペリー・ローダンとモンドラ・ダイアモンドの息子……デロリアン・ローダン。

 デロリアン・ローダンは、1800万年来、超知性体〈それ〉の年代記作者として精神集合体の中にいた。だが「もう年代記作者ではない」と言う。
 デロリアン・ローダンは、超知性体〈それ〉について「優柔不断なご老人は、いまだに自分が何者かすらわかっていないのです!」と酷評して、ペリー・ローダンに警告する。
「時間がない。警告を真摯にうけとめるのです。キン・シが目覚めました。ボットネットが待機中です。サンブリ・ユラが失踪したのです」
 デロリアン・ローダンは、キン・シが《バジス》を拿捕しようとするのを知り、ペリー・ローダンに「危険だから関与しないように」と警告しに来た。だが、キン・シの妨害により、警告は間に合わなかったのだ。
 ペリー・ローダンを乗せ、《バジス》は転送されていく。タナトス=プログラムが、走り出そうとしている……。
 デロリアンは、星系ソル消失について、こう語る。
「星系ソルの奪還は、まだ可能かもしれません。でも、ボットネットを持っているのはキン・シであって、自分ではない! あれをしたのは自分ではない……」
 エンネルハールが、デロリアンを取り押さえようと飛びかかった。モンドラ・ダイアモンドがエンネルハールを制止するうちに、デロリアンは消えた。
 ペリー・ローダンは、エンネルハールにタナトス・プログラムのことを問い質した。エンネルハールの説明は、こうだった。
「きみの知る形の《バジス》の最期をもたらすものだ」


 ペリー・ローダンは、あらためて、単独で〈隠し部屋〉の中を探索した。

 なぜヒマラヤに登るのかと問われて、エドモンド・ヒラリーは何とこたえたか。
「それが、そこにあるからだ」
 〈多宇宙スーツ〉もまた、そこにある。脅威をもたらす気配もない。
 スーツをまた身に着けながら、今度脱ぐときにスーツが拒否した場合どうなるだろうか、と考える。
「さあ、見えるだろう」ささやき声が告げた。そして、だしぬけに、思考にひっぱられたかのようにローダンの視界がひろがった。その瞬間に何が起こったかはわからないが、突然、自分の宇宙を、その大規模構造を、巨大な銀河団と、なお広大な虚空を見た。
 そして、“総覧”を得た。集中すれば、宇宙の過去深く、森羅万象に満たされた量子の泡にいたるまでをたどることができる。その可能性、その認識に、おののいた。
 究極の問いを押しのけて、より明らかなものを求め集中する。即座に、別の宇宙が視界にあらわれた。最初はためらいがちに、まもなくより詳細になって。スーツが見せているのは、若い、宇宙的な尺度ではまだおこなわれたばかりの創造。物質と反物質とがたえざる閃光と殲滅のなか、いまなお互いを消滅させあっている。
 映像が矢継ぎ早に変わっていく。ローダンは時間の終点に到った宇宙を見た。厖大なからっぽの空間。個々の原子は広漠な距離にばらまかれ、次の量子まで光年を隔てていた。また、テラナーにはその一端すら理解できない大規模構造を形成した宇宙を見た。
 そして、見た……。
 ローダンは踏みとどまった。精神の健やかさを損ないたくなければ、これ以上を見ることはできない。見てはならない。いまは、まだ。
 同時に、この展望――この“総覧”――が、何の役に立つのか、まだまるでわからない。「これまで見聞きした、同種のスーツには、特定の役目があった。このスーツの役割は、何だ?」
 〈多宇宙スーツ〉がほんとうに〈多宇宙接眼〉を動かすためだけに造られたということはありうるだろうか? たったいま見せられた、わずかなヴィジョンだけでも圧倒的ではあった。だが、意図的な選択やコントロールというものは存在しなかった。
「まだきみには理解できまい」見えない声が、低くささやいた。「〈多宇宙接眼〉と大宇宙スーツの深遠な意味は、なお当分のあいだ、つまびらかにはならない。これはどうしようもないのだ。きみはそれを少しずつ知るしかない。それを知ったとき、あるいは望むよりも早いことかもしれないが、そのとき、きみは、使命を果たさなくてはならぬ」
「では、もし望まなかったら?」まったく突然に、そんな考えが浮かんだ。「もしわたしが……」
「その決断は、きみが下さなくてはならない」見えない声がさえぎった。「きみを羨ましいとは、思わない」これが最後といわんばかりの響きと同時に、宇宙像を生み出した靄も、まるで存在しなかったかのように消え去った。

 ペリー・ローダンは〈多宇宙スーツ〉を着て〈隠し部屋〉を出た。
 エンネルハールは、言う。
「ドサンティは〈多宇宙接眼〉と〈多宇宙スーツ〉を奪いたいのだ。だから、《バジス》がカンダ銀河に転送されたら、即座に……ドサンティが《バジス》を制圧する前に、《バジス》を放棄し、逃げ出すのだっ。〈多宇宙接眼〉はドサンティの手に落ちるが……〈多宇宙スーツ〉がなければ〈多宇宙接眼〉に価値はないっ」
 エンネルハールは、消えた。


 《バジス》は、2つの銀河の間にある物質の橋の中間あたり……青く輝く凝集体の近くに実体化。
 ペリー・ローダンは、2つの銀河をカンダI、カンダIIと命名した。

 カンダ銀河に発祥したドサンティは、キン・シの補助種族。
 ハイパー水晶を大量に含む半生体性の壁の居住洞に籠もり、恐怖を攻撃性に変換する。この半生体性素材の壁は、惑星から持ち出すと死んでしまう。そのため、ドサンティは発祥惑星を離れることがなかった。
 キン・シは、ドサンティに、同様の機能を有する半生体性居住洞を装備した艦船――シリンダー状の身体をしたバダック種族が操縦する――を提供し、カンダ銀河の防衛部隊とした。

 ドサンティのトルデル・サイレトは《サカンジ》の本国軍第五防衛部隊参謀。キン・シの上級補助種族ジルス人プロテクターのカオウェンから命を受け、異星船略取に当たる。
 トルデル・サイレトは、自分とドサンティ兵、バダックの戦闘ロボット部隊を、転移パーケット――カンダ銀河に広がる転送網――経由で、実体化した異星船に送りこんだ……。

 《バジス》船内に、紫色の現象――フィクティヴ転送機を思い出させる――が発生し、知性体3体とロボット5体が実体化した。
 知性体の1体……トルデル・サイレトは、インターコスモで通告した。
「《バジス》を、遅滞なく引き渡せ」
 ペリー・ローダンは拒否した。
 すると、突然、《バジス》の乗員はドサンティの超能力……パニック放射のようなものに見舞われた。同時に、ポジトロニクスもシステムダウンした。
 やむなく、ペリー・ローダンは、《バジス》からの撤退を指示。自分は、モンドラ・ダイアモンド、グッキー、ハイパー物理学者ネモ・パルティジャンと共に、格納庫の《ミクル=ジョン》に逃げこんだ。
 ペリー・ローダンは〈多宇宙スーツ〉に教えられ、これがハイパー物理学的現象が原因であると気づく。
 ペリー・ローダンは、ミクル――《ミクル=ジョン》のパイロット意識集合体の具象化――から、《ミクル=ジョン》の全設備がシステムダウンしたことを示唆され、コンフィグからやりなおす。
 パニック放射は、弱まる気配がなかった。そうするうちにも、モンドラ・ダイアモンドが連れたペットのラモズは、急速に衰弱していく。
 ハイパー・エネルギーの混沌の中で、ペリー・ローダンは〈多宇宙スーツ〉の助けを借り、《ミクル=ジョン》のシステム復旧を完了。《ミクル=ジョン》は、緊急発進した。

 《バジス》の周囲には、モミの実の形をした宇宙船……ドサンティ船・約1千隻が展開していた。
 ドサンティ船の一団は、《バジス》を拘束場で捕捉し、残りは、《バジス》を逃げ出した搭載艇を容赦なく攻撃していた……。

ENDE

新銀河暦1469年 Perry Rhodan-Heft 2600


Perry Rhodan-Heft Nr.2600 タナトス・プログラム
Das Thanatos-Programm von Uwe Anton より
2011/9/4 y.wakabayashi
produced by rlmdi.