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| ペリー・ローダン |

Atlan-Heft アトラン・ヘフト Digest 2005

Atlan-Heft ストーリー・ダイジェスト
2005 y.wakabayashi
- 監修 / r.psytoh / 西塔玲二


 アルコン人アトランは、時の外にひとり立つ者――超知性体〈それ〉から細胞活性装置を貸与された不死者。1万年前に惑星テラで船を失い、惑星テラの文明が宇宙への足がかりをつかむまでそこですごした。
 アトランは、アルコン技術〈アルク・スミア〉により〈付帯脳〉活性化をうけている。〈付帯脳〉は表層の意識とは別にその記憶を保持しつづけるもうひとりのアトラン。
 アトランがペリー・ローダンというテラナーを友とし、アルコン人の大帝国の中枢に帰還したとき、すでにアルコン人は種としての活力を失い帝国は瓦解しつつあった。アトランは大帝国最後の皇帝として、太古に銀河系を襲ったスープラヘトの封印者オールドタイマーの30惑星障壁の謎に触れ、正体不明の侵略者――セト・アポフィスの尖兵――の銀河系侵攻を阻止する。
 退位したアトランは、ペリー・ローダンを支援し第2の故郷テラの人類を庇護する任についた⋯⋯。


1 人類の委託をうけて

Im Auftrag der Menschheit
Nr.1-175 AD2406-2844

 西暦2114年にアトランが創設した星際連合(USO)は、独自の艦隊とスペシャリストとよばれる工作員の部隊をかかえる強大な星間機構。人類の委託をうけて銀河系の秩序を守るもの。
 2406年、太陽系帝国がアンドロメダ銀河の島の王たちとの戦いに総力をあげる中、USOは銀河系内の諸問題をになうことになった。
 最大の脅威、秘密組織〈コンドス・ヴァサク〉との戦いの先鋒として投入されたのが、ふたりのテラナー、ロナルド・テケナーとシンクレア・マーロウト・ケノン。コンドス・ヴァサクとの戦いと前後して、ケノンは全身をサイボーグ化することになる重傷を負い、テケナーは細胞活性装置を手に入れる。
 2840年、ふたりは星の放浪者オタックとなのる老人にであう。やがて、最後の島の王ファクターXIII が銀河系を危機におとしいれたとき、オタックはUSOの長アトランに救いの手をさしのべる。
 アトランは、驚愕する――オタックは、アトランの養父ファルトゥローン。
 ファルトゥローンは、胸にさげるオミルゴス・クリスタルの力で、いくつもの時間平面を歩いてきた放浪者だという。

 アトランは、アルコン人の大帝国の皇帝ゴノツァル7世の一子として生まれた。
 父の異母弟オルバナショルが両親を暗殺し皇位をうばったとき、当時4歳のアトランを救出し、〈付帯脳〉活性の資格がえられる18歳まで育てたのがファルトゥローン。
 アトランは、オルバナショル3世の追跡をのがれてアルコン人の大帝国の辺境をさまよううち、ヴァルガン人の侵攻プロジェクトにまきこまれる。
 ヴァルガン人は80万年前、マイクロ宇宙と通常宇宙をつなぐドルグン転換機の副作用で強靭な肉体とプシ能力を獲得。銀河系に帝国を建設しようとした。だが、数千年後、ヴァルガン人は不死であると同時に子孫を残せないことに気づく。多くのヴァルガン人は未来に希望をつないで深層睡眠にはいり、ヴァルガン人の女王イシュタールと対抗勢力の一部が通常宇宙に残ったという。
 アトランは、女王イシュタールと同盟をむすび、銀河系に帝国を築こうとするヴァルガン人一派と戦った⋯⋯。
 当時のアトランは知る由もなかったが、ヴァルガン人の起源は、やがて西暦3440年に銀河系に到来する〈大群〉の建造者クエリオン人につながり、オールドタイマーにつながっていた。

 西暦2844年、太古にヴァルガン人が銀河系の各所に遺した〈プシ泉〉のひとつ〈スカンマニヨン山〉が暴走。USOは事態の収拾にあたる。
 惑星アルコンⅢに遺されたヴァルガン人のドリーム・マシーンを用いて逃走する犯罪者。ケノンもまた、ドリーム・マシーンを用いて追う⋯⋯気がつくと、ケノンはオルバナショル3世の統治時代にいた。ドリーム・マシーンがもたらす夢は、すなわち、異なる時間平面への旅。
 一方、USOの長アトランのもとには、ヴァルガン人カパトがあらわれる。時間の放浪者カパトは、イシュタールとアトランの息子。母のもとにアトランをつれもどすために来たというカパトに、アトランは首を横にふる――わたしは人類の委託をうけたUSOのアトランなのだ、と⋯⋯。


2 アルコンの英雄

Held von Arkon
Nr.88-299 BC8003-7997

 紀元前8000年の過去で、ケノンはアルコン人の大帝国の秘密情報局にもぐりこむ。
 王位簒奪者オルバナショル3世と大帝国の明日をになう若き日のアトラン、さらに、アンドロメダ銀河からこの銀河に移住してきたマークスの三つ巴の戦いのなかで、ケノンはアルコン人の大帝国とアトランを救う。そして、本来あるべき時代にもどるため、ドリーム・マシーンを探索する。
 アトランがオルバナショル3世をたおしたとき、ケノンはアルコンⅢの地下でドリーム・マシーンを発見した⋯⋯。

 そして、いま一組の、時をさまよう者たちがいる。
 若き日のアトランの同盟者アルゴンキン・ヤタとアンリュタは、危機に瀕したアトランを救うべく、太古の遺産〈時間カプセル〉を作動させる。制御をなくしたアルゴンキン・ヤタを救助したのは、テラナーの船⋯⋯。


3 アトランティスの王

König von Atlantis
Nr.300-499 AD2648-2650

 西暦2648年のテラで発見された太古の石版〈パルラクシュント〉。ひろがる終末の噂。シュプールをたどるUSOスペシャリストは、数万年を地球ですごした男ラザモンにたどりつく。
 ラザモンの故郷は、数万年周期で惑星をめぐり破壊をもたらす陸塊〈次元エレベータ〉。かつてアトランティス大陸があった海域に、〈次元エレベータ〉――新アトランティス――が実体化する。
 〈次元エレベータ〉は、潜入したアトランとラザモンとともに消えた。
 アルゴンキン・ヤタは、〈時間カプセル〉でアトランを追う。ドリーム・マシーンによってアトランを求めるケノンも、また〈次元エレベータ〉に実体化する。

 〈次元エレベータ〉が起点、暗黒銀河に帰還したとき、アトランは宇宙規模の戦いにまきこまれたことを知る。
 コスモクラートは、太古、この宇宙に生命と知性を播種する〈力強き者〉たちの組織をおいた。〈力強き者〉は直径1126kmの〈胞子船〉で搬生素を蒔き、移動星団〈大群〉で知性発展を促進。知性体はやがて超知性体に進化し、さらに、この宇宙にエネルギーをもたらす物質の泉を形成する。コスモクラートとは、物質の泉の彼岸にある進化の頂点。
 太古、〈力強き者〉たちの組織のひとつが、芽生えた知性に文明をもたらすために次元エレベータ・システムを建設した。当時の暗黒銀河には、〈力強き者〉イェフェナスに育まれ、おなじ名を冠する超知性体がいた。
 いつの時代にか、超知性体イェフェナスはポジティヴとネガティヴの二体に分極し、不幸にしてネガティヴなイェフェナスが勝利をおさめた。ネガティヴな超知性体は〈闇の伯父〉と称し、〈甥〉の称号をあたえたネガティヴな生命たちを介して暗黒銀河を支配する。闇の伯父は、かけつけた力強き者イェフェナスにさえ勝利し、次元エレベータを潜在的な敵=ポジティヴな知性種族の進化をさまたげる目的に転用したという。
 アトランは、〈力強き者〉イェフェナスの精神が封印された〈パルラクシュント〉の断片をかきあつめ、復活したイェフェナスが闇の伯父に勝利するのを見た。
 だが、地球にもどるアトランの記憶はかすみはじめる⋯⋯。

 高次の力が、アトランの記憶をブロックした。
 やがて、コスモクラートは銀河系の運命に深くかかわりはじめる。
 西暦3456年、超知性体〈それ〉が、イェフェナスとおなじように二体に分極する。ポジティヴな〈それ〉の勝利。〈反それ〉はコスモクラートによって〈無名ゾーン〉に幽閉される。
 太陽系帝国とUSOの崩壊、〈公会議〉による銀河系の支配と解放、遠距離宇宙船《ソル》と《バジス》による長い旅。西暦3587年、ついにアトランは友ペリー・ローダンとともに〈物質の泉〉にたどりつく。アトランは人類の代表として、コスモクラートにまみえるために、〈物質の泉〉を抜けた⋯⋯。
 ここにおよび、コスモクラートはアトランを駒とした作戦を実行にうつす。


4 《ソル》の冒険

Die Abenteuer der SOL
Nr.500-674 AD3791-3808

 西暦3791年、世代宇宙船《ソル》とともに自由に生きることを選んだ人類が、宇宙空間を漂流するアトランを救出する。
 アトランには200年間の記憶がない。ただ、故郷の銀河系と〈それ〉を守るため、超知性体セト・アポフィスと戦う使命だけを、おぼえている。
 アトランは《ソル》とともに探究の旅にたつ。
 セト・アポフィスの鏡像〈ヒドゥンX〉を倒し、〈ヒドゥンX〉を生みだした〈反それ〉の計画を阻止し、無名ゾーンからこの宇宙をおびやかす脅威を除く。その旅のなかで、《ソル》は、超存在ヴェベキングとチャイブレインにいくども助けられる。
 200年前、アトランは、〈物質の泉〉の彼此両岸のはざまの〈無名ゾーン〉で、〈反それ〉をはじめとするネガティヴな流刑囚たちとであっていた。ヴェベキングとは、アトランが〈付帯脳〉の力で〈反それ〉から分離させたポジティヴな成分。チャイブレインは、その過程で生まれ、アトランとヴェベキングの成分をあわせもつという。
 ヴェベキングと〈反それ〉の統合――新しいポジティヴな超存在の誕生の後、《ソル》とアトランは、セト・アポフィスとの戦いにのぞんだ。

 試練を切り抜けたアトランはコスモクラートに認められた⋯⋯。コスモクラートは、ついに本格的な使命に、アトランを投入する。


5 コスモクラートの委託をうけて

Im Auftrag der Kosmokraten
Nr.675-850 AD3818-3821

 西暦3818年、コスモクラートの委託をうけ、ひとり転送されたアトランは、巨大なジェットをもつ球状銀河アルコルドームに、宇宙の脅威といわれるエヴォロを探索する。
 探索のはて、マナム・トゥル銀河で目撃したのは、みずからの意志をもつ巨大なプシオン塊エヴォロの誕生。アトランは、〈付帯脳〉にたくわえられた知識と経験を核のひとつとして、エヴォロにポジティヴな性向をあたえることに成功した。
 だが、その直前にエヴォロがはなった複製たちは〈星の暗黒兄弟〉となのり、アトランを送りこんだコスモクラートに宣戦を布告する。

 ここにも、時をさまよう者たちがいる。
 アルコルドーム銀河にあらわれたファルトゥローン。かつて、アルコルドーム原住種族に〈星の暗黒兄弟〉の襲来を警告したカシャ・ナルクトゥアン。〈時間カプセル〉をあやつり、マナム・トゥル銀河で〈時間外科医師団〉の謎を追う、ゴマン・ラルゴとネイタドル・オフ。
 アトランが生きてきたこの宇宙は、無限に分岐しからみあう時間平面の複合体。各時間平面におかれた時間廟を時間カプセルでむすぶ壮大な時間病塞ネットワークを建設したのが、〈時間外科医師団〉とよばれる太古の種族。
 〈時間カプセル〉はいくつもの時間平面で、アトラン、または、かれの精神をうけつぐものたちを見いだす。いずれの時間平面でも、おのれの信じるもののために戦いつづけるアトランとその鏡像たち。

 時間病塞システムとアルコルドーム銀河の歴史を軸として戦う、アトランと〈星の暗黒兄弟〉。
 〈星の暗黒兄弟〉は、時間病塞システムによる時間改変とアルコルドームの原住種族の超技術によって、球状銀河のジェットを変化させ、〈物質の泉〉の彼岸を直接に攻撃しようとする。
 コスモクラートがさしむけたチャイブレイン――アトランの息子――、カシャ・ナルクトゥアン――アトランの知識と経験をうけついだエヴォロ――、二体の超存在にささえられたアトランは、〈星の暗黒兄弟〉をたおす。
 この時間平面での任務は終わった⋯⋯。
 アトランは、記憶がかすんでいくのを感じていた。

 時は流れる⋯⋯アトランは銀河系にもどり、テラナー、超知性体〈それ〉、コスモクラートの化身とともに、超知性体セト・アポフィスと混沌の勢力の尖兵と戦い、勝利する。だが、それは同時に、この宇宙の生命と知性を道具とみなすコスモクラートとの訣別のときでもあった。
 銀河系の諸種族は、高次勢力に利用され干渉されながらも、さまざまな模索をはじめた。その中で、アトランの種族アルコン人は活力をとりもどし、やがて復興のときをむかえる。
 新銀河暦13世紀、アルコン帝国再興の時代。
 一方、テラナーたちの国家・自由テラナー連盟はペリー・ローダンたち不死者を政界から放逐して以来、凋落の一途をたどりつつあった。


6 幕間劇 トラヴェルサン

Traversan
Nr.1-12 NGZ1290 (BC5772)

 新銀河暦1290年、M-13球状星団の惑星トラヴェルサンで発見された〈島の王〉の時間ステーション。調査に訪れたアトランを――細胞活性装置により――〈島の王〉と誤認したステーションは、プログラムにしたがい1万年前――アルコン紀元12402年、キリスト紀元前5772年――へ転移する。帰還するには、エネルギー補給とポジトロニクスの修復が必要。
 アルコン植民者からなる惑星住人は、現実時でも大半は反政府運動イプラーサの支持者。過去においても自由の気風を尊ぶ惑星トラヴェルサンは利権を漁る星区総督ピリウス・ビットの怒りを買い、いましも懲罰艦隊がせまりつつあった。時間ステーションを守るため、アトランはトラヴェルサンの側に立ってピリウス・ビットに立ち向かう。
 〈大帝国〉の法廷惑星へ、水晶界へ――アトランはついにピリウス・ビットの陰謀を暴く。だが、ビットの陰謀に連座したために破滅しかけたメリト家の大艦隊が強襲。アトランは惑星トラヴェルサンを救うが、時間ステーションは破壊される。
 アトランは、深層睡眠で1万年の時を過ごし、現実時への帰還を果たした。


7 ケンタウルス座オメガ

Omega Centauri
Nr.1-12 NGZ1225

 新銀河暦1225年2月、アルコンIのエペトラン博物館からクリシュン――古代レムール帝国のタム評議員の象徴である超技術のマント――が強奪される。アトランは現場に居合わせ、案内役の女性歴史学者ツォルトラル家のリーが負傷したことがもとで事件に関わる。アトランは、事件の背後にツォルトラル家――昨今はクローン技術で財をなした――の家長クレスト・タロがいるとにらむ。アトランは、自由テラナー連盟から現存するもう1着のクリシュン――〈島の王〉の時間工作員フラスブールが所持していた――を借用し、戦艦《アトランティス》で球状星団ブランゴーン――テラナーの星図でNGC5139球状星団〈ケンタウルス座オメガ〉――へ。
 球状星団ケンタウルス座オメガは、ハイパー嵐に覆われリニア駆動船の進入を許さない禁断星域。かつて科学者エペトランは、球状星団ケンタウルス座オメガの惑星シャマクで5角形にならぶピラミッド施設――古代レムール帝国の恒星転送機中継施設――を発見し、そこでクリシュンを入手したのだ。
 アトランとツォルトラル家のリーは、《アトランティス》搭載艦で唯一の遷移駆動艦《ATトソマ》で球状星団ケンタウルス座オメガに進入する。星団には古代レムール帝国の星区タマニウムを継承するタマニウム・シャハンと、700年前に入植したアルコン人によるタマニウム・バイラモールがある。ツォルトラル家の家長クレスト・タロはタマニウム・バイラモールを牛耳り、古代レムール技術――家業としたクローン技術もそのひとつ――を手中にしていた。
 恒星二十角形転送機の制御惑星カラグで、アトランとツォルトラル家の家長クレスト・タロ――共にクリシュンを身につけ、制御惑星カラグからタム評議員として認知された――は対峙する。クレスト・タロはツォルトラル家のリーを人質にとり、悠然とアトランの前で古代レムール技術〈意識転送機〉を披露する。「クローン技術と〈意識転送機〉によって、わたしは永遠の生命を手に入れる」⋯⋯無論〈意識転送機〉があれば、アルコン帝国を牛耳ることもたやすい。
 クレスト・タロはツォルトラル家のリーを実験台に〈意識転送機〉をデモンストレーションしようとする。その瞬間、〈意識転送機〉施設が焼けつき、警報を鳴らした⋯⋯騒動の中、クレスト・タロ一党は逮捕・拘束される。

 制御惑星カラグに、コスモクラートの使者ロボット・ザムカルがあらわれる。「コスモクラートは、〈深淵の騎士〉アトランが今後も必要だと認識している。だから、ツォルトラル家のリーに、監視役として第2の意識を植えつけておいた」⋯⋯それが〈意識転送機〉を暴走させたのだ。
 アトランは、タム評議員の権限をもって、制御計算脳に惑星カラグの封印を命じた。


黒曜石オブシディアン

Obsidian
Nr.1-12 NGZ1225

 新銀河暦1225年3月、球状星団ケンタウルス座オメガの恒星二十角形転送機に巨大プラットフォーム――全長6km、幅2km、厚さ1km――が実体化する。
 巨大プラットフォームは〈失われたポジトロニクス〉――古代レムール帝国が建造し、紀元前8000年にアトランが遭遇したときにはヴァルガン人の制御下にあったもの。無用な接触を避けるべくアトランは撤収を命じ、転送機で《ATトソマ》へ⋯⋯だが、実体化したのは〈失われたポジトロニクス〉の上。恒星二十角形転送機は〈失われたポジトロニクス〉と《ATトソマ》を〈黒曜石渓谷〉に転送する。
 〈黒曜石渓谷〉(オブシディアン・クルフト)は、二酸化珪素を主成分とする非晶質の火成岩――黒曜石――の塵と塊に囲まれた閉鎖空間。直径3億6300万km。閉鎖空間には星系がひとつ。オレンジ色の恒星の周囲に、同一軌道をめぐる同一の惑星が5つ――名はヴィナラ。うち惑星ヴィナラIだけは衛星ヴァドロン――直径は1126km――をしたがえる。
 惑星上にはこの地にいたり逃れる術のない雑多な種族が、謎の存在リトラクとヴァルガン人キタラの伝承を守り、ヴァルガン人サルダエンガルのもとで共同体を営んでいた。
 コスモクラートは蘇生させたツォルトラル家のリーを〈黒曜石渓谷〉に派遣。支配者サルダエンガルの計画を阻止しようとする。

 太古、コスモクラートから使命をうけた不死者リトラクは〈原大群〉リトラクドゥールム――銀河間航行する超巨大星団――を指揮し、宇宙に生命と知性を播種していた。5億4600万年前、リトラクドゥールムは銀河系に飛来し播生素を散布――惑星テラで〈カンブリア爆発〉として知られる進化の加速をもたらす。だが、その直後に〈混沌の勢力〉の襲撃をうけたリトラクドゥールムは大破・崩壊――リトラクドゥールムの核は球状星団ケンタウルス座オメガになったという。
 閉鎖空間〈黒曜石渓谷〉は〈原大群〉の災害時復旧システム。衛星ヴァドロンの再起動システムが稼動すればリトラクドゥールムは再生する――ただし、銀河系全体は一個の巨大な〈原大群〉になるだろう⋯⋯

 サルダエンガルは、130万年前に銀河系に飛来した――そして、西暦3440年にふたたびあらわれた――知性播種星団〈大群〉の運行を担っていたサイノスのひとり。
 〈黄色い偽神〉に占拠された〈大群〉を脱出したサイノスは銀河系に潜伏。銀河系諸種族に姿を変え潜伏した。80万年前、サルダエンガルはヴァルガン人として実験中〈黒曜石渓谷〉に漂着。〈原大群〉リトラクドゥールム再起動を画策したが果たせずに終わる。20万年前、カピン人の銀河系襲来で〈黒曜石渓谷〉脱出を余儀なくされたが、5万3000年前、レムール人として球状星団ケンタウルス座オメガに恒星転送機を建設し〈黒曜石渓谷〉に帰還。紀元前1万6588年、超大型のハイパー嵐の銀河系襲来で〈黒曜石渓谷〉から通常宇宙に転落。以後、アルコン人として惑星ラルサ――金星――のポジトロニクス建造に携わり、テラナーとして中世ヨーロッパでカリオストロ伯爵を演じた。そして、新銀

河暦618年のハイパー嵐の際にふたたび〈黒曜石渓谷〉に帰還したという。

 サルダエンガルはツォルトラル家のリーとの決闘に敗れ、イマジナールに似た存在形態に変態。惑星ヴィナラの守護者となる。衛星ヴァドロンは破壊され、搬生素の備蓄は超空間へ消失した。


9 大法官

Die Lordrichter
Nr.13-24 NGZ1225

 新銀河暦1225年5月、球状星団ケンタウルス座オメガ――いまでは、ハイパー嵐が〈黒曜石渓谷〉に起因することは明白――のレムール遺産〈意識転送機〉をペドパイラーがわりにカピン人のペドトランスファーラーが制御惑星カラグに実体化。カピン人は、故郷グルエルフィン銀河が〈ガルブの大法官〉と〈秩序の剣〉のもと危機的状況にあることを語って息絶える。

 キタラはヴァルガン人。紀元前1万6588年、ヴァルガン人女性キタラはマガンティリケン――ヴァルガン刑吏――に追われ〈黒曜石渓谷〉へ逃げこみ、惑星ヴィナラIと〈黒曜石渓谷〉を見守ってきた。
 キタラはアトランをともない、衛星ヴァドロンにあったリトラクドゥールム再生装置とヴァルガン船《アメンソーン》を係留したプラットフォーム〈失われたポジトロニクス〉で通常宇宙へ。さらにムルロト星雲へ向かう。
 ムルロト星雲の惑星ナルックは、ヴァルガン人太古施設〈プシ泉〉のひとつ〈ムルロト山〉――外観は浮遊する標高500mの氷山、プシ・エネルギーの集束装置――の座。その後、ヴァルガン人反徒8名が隠棲し精神体として旅立った場所。いまは8人が遺した人造人間たちを、昆虫種族トルガン――惑星トランプを破壊した種族に酷似――が支配していた。〈大公〉を指揮官として束ねられた昆虫種族トルガンは〈大法官〉の補助種族――ムルロト星雲にある5基の〈プシ泉〉の力を集約し〈ムルロト山〉から莫大なエネルギーを抽出することを任としていた。
 〈黒曜石渓谷〉の衛星ヴァドロン爆発に起因するハイパー嵐が〈ムルロト山〉を介して惑星ナルックを覆い、昆虫種族トルガンの活動は頓挫する。キタラとアトランはヴァルガン転送機を利用し、惑星マラン・トル――オールドタイマーの30惑星障壁のひとつ――経由で《ヴァルゾドン》――かつてのヴァルガン人の中枢都市――に向かう。《ヴァルゾドン》は〈大法官〉の補助種族艦隊に封鎖され、カピン人ガンヤス族が奪回の機会をうかがっている。
 キタラとアトランは途上入手した太古兵器〈カルデンモーゲル〉を携えてムルロト星雲に転針。〈失われたポジトロニクス〉に積みこんだ〈カルデンモーゲル〉、惑星ナルックの施設と〈ムルロト山〉をリンクし、発生させた〈超空間喉〉に昆虫種族トルガンの艦隊を吸引し壊滅させる――〈大法官〉による〈ムルロト山〉エネルギー簒奪は、わずか2日で阻止された。

 ムルロト星雲の作戦を管轄する〈大法官〉サルカハンとイールプトナは敗北を認め、《ヴァルゾドン》に展開する〈大公〉ガルプファンドグ麾下のザコール親衛隊にヴァルガン船の処置をゆだねた。


10 暗黒星ダークスター

Der Dunkelstern
Nr.25-36 NGZ1225

 新銀河暦1225年6月、ガルブヨル――〈大法官〉補助種族の総称――艦隊が封鎖する《ヴァルゾドン》を、カピン人ガンヤス族の巨大ペドパイラー《シヴェロン》が襲撃。キタラとアトランのヴァルガン船《アメンソーン》はペドパイラー《シヴェロン》と接触。同型のペドパイラー《エリスガン》がドゥインゲロー銀河――距離1628万光年――に派遣され、当地の〈大法官〉の計画を探っていることを知る。
 《アメンソーン》はペド転送機でペドパイラー《シヴェロン》からドゥインゲロー銀河の《エリスガン》へ転送され、キタラとアトランは〈大法官〉たちが建設中の〈暗黒星〉を見る――青色巨星の周囲に形成された暗黒物質の降着円盤。そこでは、ヴァルガン人たちが超技術のエンジニアとして使役されていた⋯⋯。

……物語はつづく


Atlan-Heft Digest 2005
2005/7/15 y.wakabayashi
produced by rlmdi.